平成30年度横浜市発達障害検討委員会報告書 「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」に対する施策の再構築について 平成31年3月横浜市発達障害検討委員会 目次 1 はじめに (1)平成17年度以降の、横浜市発達障害検討委員会の取組経過 (2)現状認識と求められる取組 2 平成30年度検討委員会での議論 (1)検討の経過 (2)検討委員会での主な意見 3 前提となる理念 4 課題の解決に向けた意見 (1)対象 (2)目的 (3)意見内容 (4)喫緊に取り組むべき課題 5 おわりに 【参考資料】 1 平成30年度横浜市発達障害検討委員会名簿 2 平成30年度横浜市発達障害検討委員会事務局名簿 3 「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」に関する基礎情報 4 「教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知)」 5 横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性 1 はじめに (1)平成17年度以降の、横浜市発達障害検討委員会の取組経過 横浜市の発達障害児・者支援については、発達障害者支援法施行と同時期の平成17年度から、障害者施策推進協議会の部会として「発達障害検討委員会(以下、「検討委員会」と表記)」を設置し、支援体制の整備に取り組んできた。 これまで当検討委員会では、ライフステージごとの検討を行い、乳幼児期・学齢期・学齢後期・青年期ごとの課題や、各期のつなぎ等について議論を行ってきた。 これらの議論を踏まえ、学齢後期の相談支援機関(くらす)の設置、生活アセスメント付き住宅での一人暮らし支援、地域支援マネジャー等、多くの事業が施策としてスタートした。 (2)現状認識と求められる取組 一方で、これまでの議論や、次の資料等に示されるように、発達障害とくに「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」の大幅な増加(※1)に対し、従来の障害福祉・教育等施策では、十分に対応できていない現状(※2)となっており、これらの課題に対する大幅な再構築が求められている。 こうした現状認識に基づき、これまでのライフステージごとの議論を踏まえた上で、ライフステージ全般に渡る総合的な支援についての検討が必要であると考えた。 (※1・2)に関する基礎情報【参考資料3】 2 平成30年度検討委員会での議論 今期の検討委員会では、上記の現状認識等を踏まえ、「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」について、改めてライフステージ全般に渡る課題整理と、施策の方向性に関する議論を行った。 (1)検討の経過 ・第45回(平成30年11月1日)現状認識の共有と課題抽出 「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」の大幅な増加に対し、従来の障害福祉・教育等施策では、十分に対応できていない現状についての認識を共有した。 その上で、「『軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者』が地域で自立した生活を送るための課題、および必要な支援について」をテーマに、課題抽出のためのディスカッションを行った。 ・第46回(平成30年12月18日)施策展開の方向性検討 抽出された課題について、事務局で分類・整理した内容の精査を行った。また、これらの事項のうち、特に喫緊の課題として早急に改善すべきものと、中長期的な視点で施策を検討すべきものの整理を行った。 ・第47回(平成31年2月27日)施策展開の方向性確立 施策展開の方向性について確認するとともに、横浜市施策推進協議会への報告・意見内容について精査を行った。 (2)検討委員会での主な意見 ・発達障害施策の大幅な再構築が必要であり、これらに関する検討を深め、具体的な施策に結びつけていく必要がある。 ・地域社会における共生を実現するために、社会全体への普及啓発を行っていくことを、基本理念として前提に置くと良いのではないか。 ・再構築にあたっては、支援主体ごとの役割を明確にし、相互に連携し補完しあうことで、効率的・効果的に機能させていく必要がある。 ・支援体制の中で中心的な役割を果たす機関を明確化し、その上で連携の仕組みを考える必要がある。 ・発達障害児・者に特化した、専門性の高い人材の育成と、発達障害のある人を取り巻く周囲全般が、必要な理解と適切な対応を身に付けることが重要である。 ・再構築にあたっては、福祉分野と教育分野の連携が重要であり、具体的で新たな工夫が必要となる。 3 前提となる理念 検討委員会からの意見を提示するにあたっては、次に掲げる理念等が前提となっている。 【障害者権利条約の批准と国内法の整備】 ・「障害者権利条約」とは 障害者の人権及び基本的自由の享有を確保し、障害者の固有の尊厳の尊重を促進することを目的として、障害者の権利の実現のための措置等について定める条約。 平成18(2006)年12月の国連総会において採択され、平成20(2008)年に発効された。 ・条約批准に向けた国内法の整備 日本では、平成19(2007)年に条約に署名した後、締結に先立ち、国内法の整備をはじめとする制度改革を進めた。 平成23(2011)年 障害者基本法の改正 平成24(2012)年 障害者総合支援法の成立 平成25(2013)年 障害者差別解消法の成立、及び障害者雇用促進法の改正 平成28(2016)年 障害者差別解消法の施行 これらの法整備により、一通りの国内の障害者制度の充実がなされたことから、平成26(2014)年1月に、日本での条約批准に至った。 【障害の「社会モデル」と「合理的配慮」】 ・障害者権利条約について 障害者権利条約では、障害者が日常・社会生活で受ける制限は、心身の機能のみならず、社会における様々な障壁と相対することによって生ずるという、いわゆる「社会モデル」の考え方が反映されている。 また第2条(定義)では、障害者の人権と基本的自由を確保するための「必要かつ適当な変更及び調整」であって、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」を「合理的配慮」と定義している。そして、「合理的配慮の否定」も「障害に基づく差別」であるとされた。 さらに第5条(平等及び無差別)では、障害に基づくあらゆる差別を禁止することや、合理的配慮の提供が確保されるための適当な措置をとることを求めている。 ・国内での動き これに関し、平成16(2004)年の障害者基本法の改正において、障害者差別の禁止を基本的理念として明示した。 さらに、平成23(2011)年の同法改正時には、第2条(定義)において、障害者とは「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものをいう」と定義した。また第4条(差別の禁止)では、社会的障壁の除去について、「実施に伴う負担が過重でないとき」には、「必要かつ合理的な配慮がされなければならない」ことが規定された。 さらに、第4条の理念(差別の禁止)を具体化するものとして、平成28(2016)年に「障害者差別解消法」が施行された。 【地域社会における共生】 ・障害者権利条約において 条約の第19条(自立した生活及び地域社会への包容)では、全ての障害者が、他の者と同じように地域社会で生活する権利を有することや、障害者が社会に参加し、包容されることの促進について記されている。 ・国内での動き これに関し、平成23(2011)年の障害者基本法の改正では、第1条(目的)において、「全ての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会を実現するため」と規定した。 さらに、第3条(地域社会における共生等)において、障害の有無にかかわらず共生する社会の実現を図るに当たって旨とするべき事項として、改正前から定められていた「あらゆる分野の活動に参加する機会の確保(1項)」を規定するとともに、新たに、「地域社会における共生(2項)」「コミュニケーション手段の選択の機会の確保(3項)」を規定した。 【インクルージョンの理念と浸透】 ・平成6(1994)年 ユネスコ「特別なニーズ教育に関する世界会議」(サラマンカ宣言) ※「サラマンカ宣言」とは 『世界の教育は、障害のあるなしにかかわらず、すべての子どもたち一人ひとりのニーズに対応し、なおかつ同年齢の子どもたちを一体とする場で教育すべき』。→ すべての子どもたちの教育的ニーズをとらえた上で、そのニーズに応じた教育を分け隔てのない場で実践することを求めているこの考え方が、「すべての子どもたちを一体として包み込む教育」、すなわち「インクルージョン」の考え方とされる。 【インクルーシブ教育システムの構築】 ・平成24(2012)年 共生社会の形成に向けたインクルーシブ教育システム構築のための特別支援教育の推進(報告)(文部科学省) ※共生社会の形成に向けて ・「共生社会」とは、これまで必ずしも十分に社会参加できるような環境になかった障害者等が、積極的に参加・貢献していくことができる社会である。 ・誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える全員参加型の社会である。 ・インクルーシブ教育システムとは、人間の多様性の尊重等の強化、障害者が精神的および身体的な能力等を可能な最大限度まで発達させ、自由な社会に効果的に参加することを可能とするとの目的の下、障害のある者と障害のない者が共に学ぶ仕組みであり、障害のある者が教育制度一般から排除されないこと、自己の生活する地域において初等中等教育の機会が与えられること、個人に必要な「合理的配慮」が提供されること等が必要とされている。 ・インクルーシブ教育システムにおいては、同じ場で共に学ぶことを追求するとともに、個別の教育的ニーズのある幼児児童生徒に対して、自立と社会参加を見据えて、その時点で教育的ニーズに最も的確に応える指導を提供できる、多様で柔軟な仕組みを整備する。 ・小・中学校における通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校といった連続性のある「多様な学びの場」を用意しておく。 ・基本的な方向性としては、障害のある子どもと障害のない子どもが、できるだけ同じ場で共に学ぶことを目指すべきである。その場合には、それぞれの子どもが、授業内容が分かり学習活動に参加している実感・達成感を持ちながら、充実した時間を過ごしつつ、生きる力を身につけていけるかどうか、これが最も本質的な視点であり、そのための環境整備が必要である。 今後の、本市の発達障害の施策展開にあたっては、こうした理念を前提に、広く社会全体に浸透するよう、継続的な普及・啓発に取り組む必要がある 4 課題の解決に向けた意見 (1)対象 今回の意見に関し、対象を「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」と定める。 ※対象を限定した理由は、【参考資料3】で示した基礎情報等により、「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」の数が特に大きく増加していることで、従来の施策では十分に対応できない状況が生じていると考えたためである。 (2)目的 本人の生きづらさに寄り添うために、全てのライフステージにおいて、多様な支援の実施主体により、包括的で切れ目のない支援を受けられる社会を実現すること。 なお、この実現にあたっては、次の(ア・イ)の視点に留意すべきである。 ア 役割分担と連携 ●支援の実施主体ごとの役割分担を明確にし、それぞれの強みを生かして連携し合うことで、重層的・包括的な支援体制を構築する必要がある。 ●縦軸の連携(ライフステージごとの切れ目のない連携)、及び横軸の連携(支援主体ごとの連携)の両方が必要である。 ●公民の役割分担、共助・自助など、実施主体ごとの役割を明確にし、相互に連携し補完し合うことにより、効果的・効率的な支援を行うことが必要である。 ●支援体制の中で中心的な役割を果たす機関を明確化し、その上で連携の仕組みを考えることが重要である。 ●「家庭と教育と福祉の連携※」に基づき、地域社会において、切れ目のない支援体制整備が求められる。 ●それぞれの支援主体が、具体的で新たな工夫を行うことによる、実効性の担保が求められている。 ※平成30年5月24日 30文科初第357号・障発0524第2号「教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知)」【参考資料4】。 イ 気づきの促進と未来に繋がる支援(Right time & Bright life) ●いかなるライフステージにおいても、生きづらさが生じる前、あるいは生じたときに、本人や保護者・家族、あるいは周囲の人々が早期にそれに気づき、速やかに適切な支援に結び付くことができる体制の構築が必要である。 ●その人にとって適切なタイミング(Right time)で生活のしづらさに気づき、支援を重ねることが出来れば、その人にとって明るい人生・未来(Bright life)に繋がっていくと考える。 ※横浜市では、ライフステージにおける早い段階で障害を発見し、療育に結び付ける「早期発見・早期療育」の理念を掲げてきた。 これに対し、発達障害に関しては、生きづらさがいかなるライフステージにおいて生じた場合でも、適切な時期に本人等が気づき、支援につながることの重要性を示すために、イの視点を示した。 発達障害施策の再構築にあたっては、「早期発見・早期療育」と併せて、この視点にも留意すべきである。 (3)意見内容 横浜市における、発達障害に関する、医療・福祉・教育等施策を、次に掲げる6大項目・15小項目の方向性に基づき、再構築を行うべきである・ ※【参考資料5】において、今後具体的な施策展開を行う際の目安として、大項目・小項目に対応する、「対象となる機関、および主な担い手候補となる機関」を参考として付記した。 【横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性】 T.本人への支援 ・本人がその人らしく生きるための支援の充実 ・当事者の居場所の充実。 ・二次障害(引きこもり等)への対応力向上。 ・成人期の課題に対する、本人支援の充実。 U.保護者及び家族への支援 ・保護者及び家族に対する支援の充実。 V.支援機関の連携と役割分担 ・支援機関の役割分担の明確化等による、効果的・効率的な対応。 ・ライフステージを通し、切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化。 ・医療と福祉の連携強化とネットワークの充実。 ・サービス情報提供システムの充実。 W.支援体制の強化・充実 ・就学前の対象者数増加に対する、支援体制の拡充。 ・教育と福祉の連携等による、学齢期支援の強化。 ・学齢後期における、支援の量的拡大と質的な向上。 X.人材育成 ・発達障害に関する支援力を身につけた支援者の養成。 Y.障害理解の促進・普及啓発 ・地域社会における共生の実現に向けた、社会全体の意識熟成。 ・特に教育・就労の場面における、本人を取り巻く周囲への理解促進。 (4)喫緊に取り組むべき課題 6大項目・15小項目は、いずれも極めて重要であると当検討委員会は考えている。また、これらは相互補完的、かつ連続的・一体的であり、全てが実現することにより初めて、完成したシステムとなる。 しかし、全ての施策を一挙に実現することは現実的に困難であるため、【ア 重要性】【イ 緊急性】【ウ 難易度(マンパワー・費用・時間の側面から)】の3つの視点を総合的に勘案し、次の項目については、特に喫緊に取り組むべきであることを付言する。 <「横浜市発達障害施策の再構築に係る報告性」と「喫緊に取り組むべき課題」の関係図> 横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性を6大項目・15小項目に分類し、3つの視点を総合的に勘案し、「喫緊に取り組むべき課題」を抽出する。 ※これら「喫緊に取り組むべき課題」については、再構築に向けて平成31年度に検討を開始するとともに、平成33年度から第4期横浜市障害者プラン等に反映させることが望ましいと考える。 ※また、それ以外の課題についても、順次検討を進め、可能な限り第4期以降の障害者プラン等に反映させることが望ましいと考える。 【喫緊に取り組むべき課題】 U.保護者及び家族への支援 ・保護者及び家族に対する支援の充実。 発達障害の支援には、「本人」支援と並んで保護者及び家族支援が有効であり、重要である。 このため、保護者等の交流の場等を促進するために、新たにメンター制度の創設や、ペアレントプログラム(ペアレントトレーニング)の充実などを検討すべきである。 V.支援機関の連携と役割分担 ・支援機関の役割分担の明確化等による、効率的・効果的な対応。 支援の実施主体ごとの役割分担を明確にし、相互に連携し補充し合うことで、効率的・効果的な支援体制を構築する必要がある。 また、支援体制の中で中心的な役割を果たす期間を明確化し、その上で連携の仕組みを考えることが重要である。 ・ライフステージを通し、切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化。 ライフステージごとの接続において、切れ目なく、適切な支援に繋がることができる仕組みの整備が必要である。併せて、支援機関ごとの連携強化が重要である。 また、必要な情報がタイムリーに提供されるシステムの構築等とともに、本人及び保護者・家族に対し、適切な時期に、確実に支援が届くような仕組みづくり等の検討も必要である。 W.支援体制の強化・充実 ・就学前の対象者増加に対する、支援体制の拡充。 就学前の発達障害児支援体制の拡充を行うべきである。 それに際しては、地域療育センターの機能見直しを抜本的に行うともに、関係する地域の支援機関が担うべき役割と方向性を明確にすることにより、効率的・効果的な支援体制の再構築及び必要な拡充を検討すべきである。 ・学齢後期における、支援の量的拡大と質的向上。 学齢後期障害児支援事業等それぞれの支援組織が担うべき役割と方向性を明確にした上で、効率的・効果的な支援体制の再構築および必要な拡充を検討すべきである。 X.人材育成 今回対象とした児・者への支援に特化した、専門性の高い人材の育成が必要である。 また、専門性のあり方についても、改めて検討が必要である。 同時に、福祉・教育等関係者、企業、学校、地域社会など身近な支援者全般が、発達障害に関する適切な理解と対応を身につけることも求められている。 5 おわりに (1)施策の再構築における留意点 これまで横浜市では、できる限り低年齢で障害を発見し、療育に結びつけようとする「早期発見・早期療育」の理念を掲げ、障害関連施策に取り組んできた。その結果、支援を必要とする多くの障害のある方を、福祉・医療・教育等の適切な機関に繋げることが可能となった。 しかし、今回対象とした発達障害児・者の生きづらさは、これまで早期発見の主なターゲットとしてきた未就学期等に限らず、ライフステージのあらゆる時点において発現する。 そのため、今もなお多くの方が必要な支援機関に繋がることができず、社会的な理解を得られずに、時には二次障害を併発し、苦しんでいる状況がある。 こうした現状を打破するために、「気づきの促進と未来に繋がる支援(Right time & Bright life)」すなわち、いかなるライフステージにおいても、本人や周囲の人々等がタイムリーに認知し、必要な支援にいつでも繋がることができるようにすべきであるという視点を持ち、施策展開の再構築を図るべきである。 そのためには、本人や保護者・家族、福祉・教育・医療等の支援機関、行政、地域社会等の多様な支援主体が、役割分担と連携のもとで、一体となり全員参加型で課題解決に取り組んでいく必要がある。 こうした取組の推進により、多様性を認め合い、誰もが安心して生き生きと暮らすことができる社会を実現する役割が、横浜市に課せられていると考える (2) 障害施策全体の中での発達障害施策 また本意見に関し、対象を「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」としたことについては、今回の対象児・者の急激な増加に対し、現在の障害施策が十分に対応しきれていないため、(他の障害種別を含めた)施策全体の不均衡が生じ、それぞれが持つ本来の機能を十分発揮できなくなっているとの認識も、背景に有している。 そのため、今回の対象児・者への支援体制を充実させるとともに、従来からの障害施策の対象である知的障害児・者への支援体制を更に拡充することによって、障害施策全体の均衡が図られ、それぞれの施策が自ずと、本来の機能を果たすことができるようになると考える。また今回の意見の中には、「支援機関の連携と役割分担による効果的・効率的な支援」や「多様な人材育成」「地域社会における共生のための理解促進」「保護者及び家族等支援の充実」等、障害施策全般に共通する、有効な指摘が含まれているのではないかとも考えている。 (3) 期待する今後の取組 今回の意見を参考とした上で、横浜市の発達障害施策の方向性が明確化し、具体的な施策に結(むす)び付(つ)けられることを、当検討委員会は心より願っている。またこれらが、第4期横浜市障害者プラン、第2期横浜市子ども・子育て支援事業計画、第4期横浜市教育振興基本計画等に反映されることを期待している。 そのために今後、関係機関等からさらに幅広い意見を受け、議論を深めるとともに、具体的な施策の検討を行っていくことが望ましいと考えている。 参考資料1 平成30年度 横浜市発達障害検討委員会名簿 1 学識経験者 渡部 匡隆  所属 横浜国立大学教授 大学院教育学研究科高度教職実践専攻 2 学識経験者 平田 幸宏 所属 東洋英和女学院大学人間科学部 3医療従事者 高木 一江 所属 横浜市中部地域療育センター 4 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 小川 淳 所属 横浜市総合リハビリテーションセンター 5 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 寺田 純一 所属 かながわ地域活動ホーム ほのぼの 6 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 安藤 壽子 所属 NPO法人 L’enfantPlaza(らんふぁんぷらざ) 7 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 西尾 紀子 所属 横浜市発達障害者支援センター 8 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 池田 彩子 所属 NPO法人ユースポート横濱よこはま若者サポートステーション 9 障害児・者やその家族 坂上 尚子 所属 神奈川LD等発達障害児・者親の会 にじの会 10 障害児・者やその家族 中野 美奈子 所属 横浜市自閉症児・者親の会 参考資料2 平成30年度横浜市発達障害検討委員会事務局名簿 健康福祉局 障害福祉部長 本吉 究 企画課長 平木 浩司 障害企画課長 佐渡 美佐子 障害福祉課長 佐藤 祐子 障害支援課長 上條 浩 精神保健福祉推進担当課長 榎本 良平 こども青少年局 こども福祉保健部長 細野 博嗣 企画調整課長 福嶋 誠也 障害児福祉保健課長 遠藤 文哉 青少年相談センター所長 内田 太郎 放課後児童育成課長 茨 志麻 子育て支援課長 永井 由香 保育・教育運営課長 武居 秀顕 保育・教育人材課長 甘粕 亜矢 幼・保・小連携担当課長 金子 正人 教育委員会事務局 特別支援教育課長 須山 次郎 特別支援教育相談課長 青木 正章 参考資料3 関連基礎情報 「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」に関する基礎情報 「『軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者』の大幅な増加」について<※1に関する基礎情報> 1 厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」 発達障害と診断されたものの数 平成23年度 手帳所持者数245,700人・非手帳所持者数66,800人・不詳4,900人・合計317,400人 平成28年度 手帳所持者数368,000人・非手帳所持者数103,000人・負傷10,000人・合計481,000人 2 地域療育センター初診件数と発達障害の診断件数 地域療育センター初診件数と発達障害の診断件数※ここでの「発達障害」は知的な遅れの有無を問わない。 平成20年度 初診件数2,454人・うち発達障害の診断件数1,558人 平成21年度 初診件数2,645人・うち発達障害の診断件数1,673人 平成22年度 初診件数2,569人・うち発達障害の診断件数1,551人 平成23年度 初診件数2,864人・うち発達障害の診断件数1,759人 平成24年度 初診件数3,144人・うち発達障害の診断件数2,006人 平成25年度 初診件数4,046人・うち発達障害の診断件数2,759人 平成26年度 初診件数3,811人・うち発達障害の診断件数2,542人 平成27年度 初診件数3,944人・うち発達障害の診断件数2,722人 平成28年度 初診件数4,256人・うち発達障害の診断件数2,960人 平成29年度 初診件数4,432人・うち発達障害の診断件数3,072人 3 発達障害に関する専門相談支援機関への新規相談者のうち、療育手帳非所持者(平成29年度) (1)学齢後期発達相談室「くらす」 療育手帳所持者数18人(14.75%)・療育手帳非所持者数104人(85.25%)・合計新規相談者数122人 (2)発達障害者支援センター 療育手帳所持者数4人(1.99%)・療育手帳非所持者数197人(98.01%)・合計新規相談者数201人 4 一般学級に在籍する特別な支援が必要とされる児童生徒数の推移 平成29年度「発達障害のある児童生徒に関する調査」より※手帳および診断の有無を問わない調査のため、あくまで参考値 小学校 支援が必要な人数16,771人(9.51%)・その他159,410人(90.49%)・全体数176,181人 中学校 支援が必要な人数4,716人(6.09%)その他72,618人(93.91%)・全体数77,334人 5 通級指導教室在籍児童生徒数 通級指導教室児童生徒 小学校 平成21年度 言語424人・情緒588人・LD/ADHD139人・合計1,254人 平成22年度 言語417人・情緒581人・LD/ADHD149人・合計1,254人 平成23年度 言語405人・情緒576人・LD/ADHD173人・合計1,258人  平成24年度 言語417人・情緒603人・LD/ADHD193人・合計1,327人  平成25年度 言語402人・情緒576人・LD/ADHD222人・合計1,311人  平成26年度 言語446人・情緒565人・LD/ADHD269人・合計1394人  平成27年度 言語509人・情緒694人・LD/ADHD340人・合計1,654人  平成28年度 言語535人・情緒726人・LD/ADHD384人・合計1,758人  平成29年度 言語540人・情緒793人・LD/ADHD444人・合計1,893人 中学校 平成21年度 言語46人・情緒165人・LD/ADHD18人・合計256人 平成22年度 言語44人・情緒195人・LD/ADHD45人・合計304人 平成23年度 言語40人・情緒197人・LD/ADHD56人・合計313人  平成24年度 言語35人・情緒214人・LD/ADHD54人・合計320人  平成25年度 言語45人・情緒187人・LD/ADHD43人・合計298人  平成26年度 言語45人・情緒195人・LD/ADHD72人・合計338人  平成27年度 言語44人・情緒217人・LD/ADHD107人・合計394人  平成28年度 言語44人・情緒238人・LD/ADHD143人・合計450人  平成29年度 言語53人・情緒166人・LD/ADHD227人・合計470人 盲特別支援 平成21年度 小学部(弱視)0人・中学部(弱視)0人・合計0人 平成22年度 小学部(弱視)0人・中学部(弱視)0人・合計0人 平成23年度 小学部(弱視)7人・中学部(弱視)3人・合計10人 平成24年度 小学部(弱視)10人・中学部(弱視)1人・合計11人 平成25年度 小学部(弱視)11人・中学部(弱視)2人・合計13人 平成26年度 小学部(弱視)11人・中学部(弱視)1人・合計12人 平成27年度 小学部(弱視)9人・中学部(弱視)1人・合計10人 平成28年度 小学部(弱視)8人・中学部(弱視)2人・合計10人 平成29年度 小学部(弱視)7人・中学部(弱視)4人・合計11人 ろう特別支援 平成21年度 小学部(難聴)22人・小学部(言語)3人・中学部(難聴)3人・中学部(言語)0人・合計28人 平成22年度 小学部(難聴)22人・小学部(言語)4人・中学部(難聴)4人・中学部(言語)0人・合計30人 平成23年度 小学部(難聴)23人・小学部(言語)6人・中学部(難聴)7人・中学部(言語)0人・合計36人 平成24年度 小学部(難聴)19人・小学部(言語)3人・中学部(難聴)9人・中学部(言語)0人・合計31人 平成25年度 小学部(難聴)17人・小学部(言語)4人・中学部(難聴)10人・中学部(言語)0人・合計31人 平成26年度 小学部(難聴)19人・小学部(言語)4人・中学部(難聴)11人・中学部(言語)人・合計34人 平成27年度 小学部(難聴)17人・小学部(言語)4人・中学部(難聴)13人・中学部(言語)1人・合計35人 平成28年度 小学部(難聴)13人・小学部(言語)7人・中学部(難聴)19人・中学部(言語)1人・合計40人 平成29年度 小学部(難聴)18人・小学部(言語)8人・中学部(難聴)19人・中学部(言語)1人・合計46人 6 障害種別就学・教育相談件数 障害種別就学・教育相談件数 平成25年度 肢体不自由等400件・知的障害1,120件・発達障害2,172件 平成26年度 肢体不自由等431件・知的障害1,077件・発達障害2,502件 平成27年度 肢体不自由等408件・知的障害1,033件・発達障害2,532件 平成28年度 肢体不自由等414件・知的障害1,096件・発達障害2,757件 平成29年度 肢体不自由等451件・知的障害1,144件・発達障害2,726件 「従来の障害福祉・教育等施策では、十分に対応できていない現状」について<※2に関する基礎情報> 1 児童福祉法に基づくサービス 延べ利用人数 平成24年度 児童発達支援96,310人・医療型児童発達支援17,431人・放課後等デイサービス39,289人・保育所等訪問支援0人 平成25年度 児童発達支援124,673人・医療型児童発達支援19,123人・放課後等デイサービス86,458人・保育所等訪問支援146人 平成26年度 児童発達支援140,759人・医療型児童発達支援22,127人・放課後等デイサービス201,550人・保育所等訪問支援96人 平成27年度 児童発達支援159,562人・医療型児童発達支援20,953人・放課後等デイサービス350,782人・保育所等訪問支援66人 平成28年度 児童発達支援176,280人・医療型児童発達支援18,849人・放課後等デイサービス521,130人・保育所等訪問支援89人 平成29年度 児童発達支援199,766人・医療型児童発達支援18,604人・放課後等デイサービス652,983人・保育所等訪問支援128人 事業所数 平成24年度 児童発達支援38箇所・医療型児童発達支援9箇所・放課後等デイサービス25箇所・保育所等訪問支援0箇所 平成25年度 児童発達支援43箇所・医療型児童発達支援9箇所・放課後等デイサービス58箇所・保育所等訪問支援9箇所 平成26年度 児童発達支援46箇所・医療型児童発達支援9箇所・放課後等デイサービス93箇所・保育所等訪問支援9箇所 平成27年度 児童発達支援53箇所・医療型児童発達支援9箇所・放課後等デイサービス162箇所・保育所等訪問支9援箇所 平成28年度 児童発達支援77箇所・医療型児童発達支援9箇所・放課後等デイサービス217箇所・保育所等訪問支援10箇所 平成29年度 児童発達支援101箇所・医療型児童発達支援9箇所・放課後等デイサービス262箇所・保育所等訪問支援13箇所 横浜市における予算・決算額(障害児通所支援) 平成24年度 予算額1,081,441千円・決算額1,543,972千円 平成25年度 予算額1,589,903千円・決算額2,049,654千円 平成26年度 予算額3,175,543千円・決算額3,273,155千円 平成27年度 予算額3,482,835千円・決算額4,909,228千円 平成28年度 予算額5,763,015千円・決算額7,116,963千円 平成29年度 予算額7,693,938千円・決算額9,008,275千円 30文科初第357号 障発 0 5 2 4 第2号 平成30年5月24日 各都道府県知事 各指定都市市長 各都道府県教育委員会教育長 各指定都市教育委員会教育長 附属学校を置く各国公立大学法人学長 構造改革特別区域法第 12 条第 1 項の       殿 認定を受けた各地方公共団体の長 文部科学省初等中等教育局長(公印省略) 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長(公印省略) 教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知) 教育と福祉の連携については、保育所、幼稚園、認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校等(以下「学校」という。)と児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所等(以下「障害児通所支援事業所等」という。)との相互理解の促進や、保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されているところであり、各地方自治体において、教育委員会や福祉部局の主導のもと、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目ない支援が受けられる支援体制の整備が求められている。 特に、発達障害者支援については、発達障害者支援法の一部を改正する法律(平成28年法律第64号)が平成28年8月1日から施行されており、「個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない」とされている。こうした課題を踏まえ、文部科学省と厚生労働省では、昨年の12月より、両省による家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトにて検討を行い、このたび、本年3月に別添1のとおり「家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告」(以下「報告」という。)を取りまとめたところである。 両省においては、報告を踏まえ、今後さらに施策の充実を図ることとしており、貴職におか れても報告の趣旨を踏まえ、下記について積極的な取組をお願いしたい。 なお、各都道府県におかれては、貴管内市町村(指定都市を除き、特別区を含む。)及び関係機関等に対して、各都道府県教育委員会におかれては、所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して、各指定都市教育委員会におかれては、所管の学校に対して、各都道府県知事及び構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては、所轄の学校及び学校法人等に対して、各国立大学法人学長におかれては、附属学校に対して、このことを十分周知し、本通知の運用に遺漏のないようご配慮願いたい。 記 1 教育と福祉の連携を推進するための方策について 発達障害をはじめ障害のある子供は、教育委員会、福祉部局といった各地方自治体の関係 部局や、学校、障害児通所支援事業所等といった複数の機関と関わっていることが多い。 各地方自治体においては、教育委員会と福祉部局において各制度を所管しているが、双方の垣根を排除し、就学前から学齢期、社会参加まで切れ目なく支援していく体制を整備する ことが重要であることを踏まえ、以下の取組を促進すること。 (1)教育委員会と福祉部局、学校と障害児通所支援事業所等との関係構築の「場」の設置について 学校と障害児通所支援事業所等の管轄部署が異なるため、障害のある子供の情報が双方の現場で共有されにくいことを踏まえ、各地方自治体は、教育委員会と福祉部局が共に主 導し、学校と障害児通所支援事業所等との関係を構築するための「連絡会議」などの機会 を定期的に設けること。その際、各地方自治体は、別添2の地方自治体の実践事例等を参 考に、既存の特別支援教育連絡協議会、発達障害者支援地域協議会及び(自立支援)協議 会等の既存の協議会を活用する等、効率的かつ効果的な運営に努めること。 (2)学校の教職員等への障害のある子供に係る福祉制度の周知について 例えば、小・中学校から放課後等デイサービス事業所への送迎時において、放課後等デイサービスについての教職員の理解が深まっていないために、対象児童生徒の学校における様子などの情報提供をはじめとする学校の協力が得られにくいことがある。これを踏まえ、各地方自治体において、教育委員会と福祉部局が連携し、放課後等デイサービスや保 育所等訪問支援事業を含む障害のある子供に係る福祉制度について、小・中学校や特別支 援学校の校長会、教職員の研修会等において福祉部局や障害児通所支援事業所等が説明す る機会を確保し、学校の教職員等に対して制度の周知を図ること。 また、特に、保育所、幼稚園、認定こども園等の子供とその保護者が集まる場には、発達障害に関する知識を有する専門家を派遣する、巡回支援専門員整備事業を活用するなど し、発達障害についての知識や対応技術の普及を促すこと。 (3)学校と障害児通所支援事業所等との連携の強化について 学校と放課後等デイサービス事業所において、お互いの活動内容や課題、担当者の連絡先などが共有されていない等により、両者の円滑なコミュニケーションが図れず連携ができてない。他方、個々の障害児に対する支援計画については、各学校において個別の教育 支援計画を、障害児通所支援事業所等において個別支援計画を作成している。こうした状 況を踏まえ、学校と障害児通所支援事業所等間の連携方策について、別添2の地方自治体 の実践事例を参考に検討し、学校と障害児通所支援事業所等間の連携の仕組みを構築する こと。 2 保護者支援を推進するための方策 障害のある子供やその保護者にとって、専門的な相談ができる機関や保護者同士の交流の 場が必要であることを踏まえ、各地方自治体においては、以下に示す支援等に取り組むこと。 (1)保護者支援のための相談窓口の整理について 乳幼児期、学齢期から社会参加に至るまでの各段階で、必要となる相談窓口が分散して おり、保護者は、どこに、どのような相談機関があるのかが分かりにくく、必要な支援を 十分に受けられないことがある。これを踏まえ、各地方自治体においては、教育委員会と 福祉部局が連携し、別添3に示した相談窓口を一元化している地方自治体の事例等を参考 に、教育委員会や福祉部局等の関係部局及び教育センター、保健所、発達障害者支援セン ター、児童発達支援センター等の関係機関の相談窓口を整理し、保護者が自治体のどこの 部署や機関に相談すればよいのかを分かりやすく示すこと。 なお、相談の対応に際しては、以下の2(2)で作成したハンドブックを活用するなど、 担当以外の職員であっても適切な窓口を紹介できるようにすること。 (2)保護者支援のための情報提供の推進について 保護者は、相談支援事業所や障害児通所支援事業所等のサービス内容や利用方法が分か らず、子供に合う事業所を見つけることに苦労したり、相談窓口がわからず、誰に相談し てよいのかわからないということがある。これを踏まえ、各地方自治体においては、福祉 制度が分かりやすく、利用しやすいものとなるよう、支援に係る情報や相談窓口が一目で 分かるような、保護者向けハンドブックを作成すること。 さらに、各地方自治体がハンドブックを作成する際には、別添4を参考に、障害につい ての基本的な事項、子供やその保護者が受けられる教育・福祉制度の概要、その自治体に おいて提供される行政サービスの内容や相談機関の概要と連絡先等など、保護者が必要と する内容を盛り込み、継続的にその活用と周知を図ること。 (3)保護者同士の交流の場等の促進について 周囲に子育てに関する悩み等を話せる人がおらず、障害のある子供の保護者が孤立感・孤独感を感じてしまい、家にひきこもってしまう場合があることを踏まえ、各地方自治体 においては、こうした保護者同士の交流の場を設けるピアサポートの推進や専門的な研修 を受けた障害のある子供を持つ保護者(以下「ペアレントメンター」という。)の養成及 びペアレントメンターによる相談支援を実施すること。 また、家庭での教育も重要であることから、保護者が発達障害の特性を踏まえた接し方や褒め方等を学び、子供の問題行動を減少できるよう、保護者に対してペアレントプログラムやペアレントトレーニングによる支援を行うこと。 さらに、教育委員会においても、福祉部局と連携しつつ、就学相談、教育相談等の機会 を捉え、保護者同士の交流を促進するような取組を促すこと。 (4)専門家による保護者への相談支援について 障害児支援利用計画の作成にあたる相談支援専門員について、障害のある子供や発達障 害について専門的知識を有する者が不足していることを踏まえ、各都道府県は、相談支援 専門員が受講する、障害のある子供についての知識や経験等を積むことができるような専 門コース別研修を積極的に開催すること。 別添1.家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告(平成30年3月29 日 家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトチーム) 別添2.教育と福祉の関係部局・機関の関係構築の場として、既存の会議を活用した事例及び 学校と障害児通所支援事業所等との連携の実践事例 @ 徳島県 A 大阪府箕面市 別添3.相談窓口一元化の実践事例 @ 東京都日野市 A 新潟県三条市 別添4.保護者支援のためのハンドブック作成にあたってのポイント (参考1)栃木県宇都宮市の例: 「発達障がいを正しく理解しよう!(乳幼児期編)」リーフレット、パンフ レット http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kurashi/shogai/hattatsu/1004265.html (参考2)富山県の例: 「ひとりじゃないよ(学齢期)発達障害支援ハンドブック」ハンドブック http://tym-ariso.org/not_alone.html 別添 別添1.家庭と教育の福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告(平成30年3月29日家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトチーム) 別添2.教育と福祉の関係部局・機関の関係構築の場として、既存の会議を活用した事例及び学校と障害児通所支援事業所等との連携の実践事例 @徳島県A大阪府箕面市 別添3.相談窓口一元化の実践事例 @徳島県A大阪府箕面市 別添4.保護者支援のためのハンドブック作成にあたってのポイント (参考1)栃木県宇都宮市の例:「発達障がいを正しく理解しよう!(乳幼児期編)」リーフレット、パンフレット http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kurashi/shogai/hattatsu/1004265.html (参考2)富山県の例:「ひとりじゃないよ(学齢期)発達障害支援ハンドブック」ハンドブック http://tym-ariso.org/not_alone.html 参考資料5 【横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性】 ☆【既存の施策等の変革】及び【新規の取組】が必要な事項 1 抽出された項目  集団生活の苦しさ・支援の必要性を声に出しにくい・二次障害の発生・発達障害≠特別・社会の理解(色々な子がいていいよ)・インクルーシブな合意形成・ソーシャルスキルの必要性を認識しづらい・親からのプレッシャー・早い時期に決めつけ 課題項目(求められているもの)  大項目・本人への支援  小項目・本人がその人らしく生きるための支援の充実。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎地域療育センター◎学齢後期障害児支援事業◎発達障害者支援センター◎ 障害児通所支援事業(児童発達支援事業所・放課後等デイサービス事業所)◎ 障害者ピア相談センター 他 2 抽出された項目  居場所になれるところがない・中学高校以降の居場所不足(仲間が減る、孤立化)?二次障害の発生?二次障害のリスク(医療的なサポートが必要)?家族との関係が希薄に?社会の理解(色々な子がいていいよ)?環境の中で生かされる?不登校→引きこもりへ?不登校になった子が行く場所がない?集団生活の苦しさ 課題項目(求められているもの)  大項目・本人への支援  小項目・当事者の居場所の充実。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎障害者地域活動ホーム◎地域ケアプラザ◎青少年相談センター◎ユースプラザ◎若者サポートステーション◎よこはま型若者自立塾◎放課後児童クラブ・放課後キッズクラブ・はまっ子ふれあいスクール 他 3 抽出された項目 二次障害の発生・二次障害のリスク(医療的なサポートが必要)・居場所になれるところがない・中学高校以降の居場所不足(仲間が減る、孤立化)・家族との関係が希薄に・発達障害≠特別・社会の理解(色々な子がいていいよ)・インクルーシブな合意形成・環境の中で生かされる・不登校→引きこもりへ・不登校になった子が行く場所がない・集団生活の苦しさ・一斉学習になじまない・子どもの生活自体が忙しい 課題項目(求められているもの)  大項目・本人への支援  小項目・二次障害(引きこもり等)へ対応力向上 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎小学校・中学校・高等学校◎特別支援学校・高等特別支援学校◎通信制校・サポート校・技能連携校◎教育総合相談センター◎学齢後期障害児支援事業◎青少年相談センター◎児童相談所◎区福祉保健センター◎基幹相談支援センター◎精神障害者生活支援センター◎指定特定相談支援事業所◎障害児相談支援事業所◎発達障害者支援センター 他 4 抽出された項目 大学生になって(発達障害に)気づく・就職段階で発達障害だと告知される・自己理解の不足?家庭生活を築きにくい・支援の必要性を声に出しにくい・パートナーが困っている・親なき後の支援(の質)・親からのプレッシャー・未診断の方は自立に向けての道程で、上手く行く・行かないの差が大きい・両親の一方か両方が発達障害の疑い・二次障害・支援者側の理解が不十分な結果、触法行動に繋がる・精神科医療の必要性・長時間労働の困難な人への所得補償・生活の支援 課題項目(求められているもの)  大項目・本人への支援  小項目・成人期の課題に対する、本人支援の充実。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎区福祉保健センター(高齢・障害支援課、生活支援課)◎基幹相談支援センター◎精神障害者生活支援センター◎指定特定相談支援事業所◎発達障害者支援センター◎就労支援センター◎就労系障害福祉サービス事業所◎障害者地域活動ホーム◎地域ケアプラザ◎青少年相談センター◎ユースプラザ◎若者サポートステーション◎よこはま型若者自立塾◎あんしんセンター◎障害者ピア相談センター  他 5 抽出された項目  ・親が障害があることに気付かない・親の障害受容に時間がかかる・保護者への継続的なサポート・保護者に対する教育、及び支援の不足(サービス利用を含め)・親に対する共感的な支援(ペアレントメンター)・子どもの変化に気づきにくい・支援の選択肢。情報収集が難しい・サービスの選択に迷う・親からのプレッシャー(が強い)・保護者、支援者の責任なのか・家族等の変化「どこにつれていったら良いか?」に変わってきている。・両親の一方か両方が発達障害の疑い 課題項目(求められているもの)  大項目・保護者及び家族への支援  小項目・保護者及び家族に対する支援の充実。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎地域療育センター◎学齢後期障害児支援事業所◎発達障害者支援センター◎通級指導教室◎特別支援教育総合センター ◎教育総合相談センター◎障害児通所支援事業所(児童発達支援事業所・放課後等デイサービス事業所)◎障害児地域訓練会◎地域子育て支援拠点◎障害児・者団体(家族会) 他 6 抽出された項目  民間の参入も含め、サービスを再構築・サービスの選択に迷う・家族等の変化「どこにつれていったら良いか?」に変わってきている。・療育センターの仕組みが破たん・コーディネーター機能の不足・支援の選択肢、情報収集が難しい・基幹型相談支援センターの役割の明確化・専門性が十分でない・制度はある程度整っているが、運用上の課題がある・既存のものをどう活用するかがポイント・保育のユニバーサルデザイン化が必要(発達障害への専門性を高めるばかりでは弱い)・放課後等デイサービスができたため、地活は土日の利用が多くなっている・療育センターの応援が必要 課題項目(求められているもの)  大項目・支援機関の連携と役割分担  小項目・支援機関の役割分担の明確化等よる、効率的・効果的な対応。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関 ◎地域療育センター◎地域子育て支援拠点◎障害児地域訓練会◎保育所・幼稚園◎小学校・中学校・高等学校◎特別支援学校・高等特別支援学校◎通信制校・サポート校・技能連携校◎特別支援教育総合センター ◎教育総合相談センター◎障害児通所支援事業所(児童発達支援事業所・放課後等デイサービス事業所)◎学齢後期障害児支援事業所◎区福祉保健センター◎基幹相談支援センター◎精神障害者生活支援センター◎指定特定相談支援事業所◎障害児相談支援事業所◎発達障害者支援センター◎就労支援センター◎青少年相談支援センター◎ユースプラザ◎若者サポートステーション◎よこはま若者自立塾◎障害者ピア相談センター◎就労系障害福祉サービス事業所◎障害者地域活動ホーム◎地域ケアプラザ◎民生委員・児童委員 他 7 抽出された項目  生涯に亘って継続した支援ナビゲーター・サービス利用のコーディネーター・コーディネーター機能の不足 課題項目(求められているもの)  大項目・支援機関の連携と役割分担  小項目・ライフステージを通し、切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎発達障害者支援センター◎区福祉保健センター◎基幹相談支援センター◎精神障害者生活支援センター◎指定特定相談支援事業所◎障害児相談支援事業所◎特別支援教育総合センター 他 8 抽出された項目  医師、病院の不足・医療のネットワーク不足・精神科医療の必要性・心理等の他職種の資源が少ない・医療と福祉の連携不足・未診断の方は自立に向けての道程で、上手くい行かないの差が大きい・医療に対する過大な期待 課題項目(求められているもの)  大項目・支援機関の連携と役割分担  小項目・医療と福祉の連携強化とネットワークの拡充。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎医師会・病院協会・医療機関◎横浜市立大学◎社会福祉士会◎地域療育センター◎学齢後期障害児支援事業所◎発達障害者支援センター◎区福祉保健センター◎基幹相談支援センター◎精神障害者生活支援センター◎指定特定相談支援事業所◎障害児相談支援事業所 他 9 抽出された項目  サービスの選択に迷う・情報を一元化に渡せる手段・家族等の変化「どこにつれていったら良いか?」に変わってきている。・保護者に対する教育、及び支援の不足(サービスの利用を含め) 課題項目(求められているもの)  大項目・支援機関の連携と役割分担  小項目・サービス情報提供システムの充実。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎横浜市◎発達障害者支援センター 他 10 抽出された項目  対象者の増加・知的な遅れなしが半分、軽度が7割(増加中)・一見判りにくい特性の子が増えている・医学的にも判断が難しくなっている・対象があいまい・障害を告知する前の支援・新しい評価の仕組みが必要・保育のユニバーサルデザイン化が必要(発達しょうがへの専門性を高めるばかりでは弱い) 課題項目(求められているもの)  大項目・支援体制の強化・拡充  小項目・就学前の対象者増額に対する、支援体制の拡充。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎地域療育センター◎保育所・幼稚園◎障害児相談支援事業所◎障害児通所支援事業所(児童発達支援事業所)◎地域子育て支援拠点◎障害児地域訓練会 他 11 抽出された項目  先生方のサポートが必要(幼保小)・制度はある程度整っているが、運用上の課題がある・既存のものをどう活用するかがポイント・一般級教員の支援不足・学校の授業の質を向上・昔からの教授法では対応できない・親に対する教育的関与・療育センターの応援が必要・一斉学習になじまない 課題項目(求められているもの)  大項目・支援体制の強化・拡充  小項目・教育と福祉の連携等による、学齢期の支援の強化。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎教育委員会◎小学校・中学校・高等学校◎特別支援学校・高等特別支援学校◎通信制校・サポート校・技能連携校◎特別支援教育総合センター◎教育総合相談センター◎地域療育センター◎学齢後期障害児支援事業所◎区福祉保健センター◎基幹相談支援センター◎精神障害者生活支援センター◎障害児相談支援事業所◎障害児通所支援事業所(放課後等デイサービス事業所)◎保育所・幼稚園◎放課後児童クラブ・放課後キッズクラブ・ はまっ子ふれあいスクール 他 12 抽出された項目  二次障害の発生・二次障害のリスク(医療的なサポートが必要)・福祉に繋がっているか否かで認識が違う・家族の孤立感、不安・偏った情報・居場所になれるところがない・中学高校以降の居場所不足(仲間が減る、孤立化)・家族との関係が希薄に・対象があいまい 課題項目(求められているもの)  大項目・支援体制の強化・拡充  小項目・学齢後期における、支援の量的拡大と質的な向上。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎中学校・高等学校◎特別支援学校・高等特別支援学校◎サポート校・技能連携校◎教育総合相談センター◎学齢後期障害児支援事業◎障害児相談支援事業所◎障害児通所支援事業所(放課後等デイサービス事業所) 他 13 抽出された項目  専門性が十分でない・心理?他職種の資源が少ない・大学の職員の障害への理解が必要・支援者側の理解が不十分な結果、触法行動に繋がる・突然、発達障害と知ったときの支援者の在り方・先生方のサポート必要・親に対する教育的関与・一般級教員の支援不足・学校の質を向上 課題項目(求められているもの)  大項目・人材育成  小項目・発達障害に関する支援力を身につけた支援者の養成。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎国◎横浜市◎教育委員会◎発達障害者支援センター◎地域療育センター◎学齢後期障害児支援事業所 他 14 抽出された項目 インクルーシブな合意形成・地域の理解と受け皿・二次障害の発生・発達障害≠特別・社会の理解(色々な子がいていいよ)・環境の中で生かされる・地域の連携の仕組みが整っていない(中学校区ぐらいで)・地域(方面事務所単位ぐらいで)の仕組みづくり・集団生活の苦しさ・基礎的環境整備・合理的配慮 課題項目(求められているもの)  大項目・障害理解の促進・普及啓発  小項目・地域社会における共生の実現に向けた、社会全体の意識熟成。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎横浜市◎教育委員会◎発達障害者支援センター◎障害児・者団体(当事者・家族会等) 他 15 抽出された項目 大学教員を含めての周囲の理解不足・企業のメンタルヘルスへの支援が不足している・大学の職員の障害への理解が必要・就労支援機関の認識不足(決めつけ、押し付け) 課題項目(求められているもの)  大項目・障害理解の促進・普及啓発  小項目・特に教育・就労場面における、本人と取り巻く周囲への理解促進。 対象となる機関、及び主な担い手候補となる機関  ◎横浜市◎発達障害者支援センター◎就労支援センター◎専門学校・大学・企業等◎障害児・者団体(当事者・家族会等) 他