軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者への具体的施策の展開について【答申案】 令和2年6月 横浜市障害者施策推進協議会 目次 はじめに 2ページ 第1章 検討の背景 1−1 国の取組 3ページ 1−2 横浜市の取組 4ページ 第2章 平成30年度 横浜市発達障害検討委員会の取組 6ページ 2−1 平成30年度 横浜市発達障害検討委員会の検討内容 6ページ 2−2 横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性 7ページ 2−3 喫緊に取り組むべき課題 8ページ 2−4 横浜市長からの諮問 10ページ 第3章 具体的な施策の展開について 3−1 「発達障害」の定義と、本答申における対象児・者について 11ページ 3−2 前提となる考え方 12ページ 3−3 本答申の構成について 15ページ 3−4 6大項目・15小項目に関する視点 16ページ 大項目T 本人がその人らしく生きるための支援の充実 16ページ 大項目U 保護者及び家族への支援 21ページ 大項目V 支援機関の連携と役割分担 23ページ 大項目W 支援体制の強化・充実 29ページ 大項目X 人材育成 34ページ 大項目Y 障害理解の促進・普及啓発 36ページ 第4章 今後の展開 4−1 今後の施策展開に向けて 40ページ 資料編 41ページ はじめに ここに、「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者への具体的な施策の展開」について答申します。 平成17年の発達障害者支援法施行から、横浜市では、発達障害児・者の支援体制の整備に取り組まれてきました。これまで、長く制度の谷間に置かれていた発達障害児・者に対する支援は着実に進展し、 発達障害に対する市民の理解も広がってきました。しかし、同法施行から10年以上が経過し、新たな取組が強く要請されるようになりました。平成28年の発達障害者支援法の改正は、その代表的な動きと考えられます。 この法改正の最も大きな背景の一つが、発達障害児・者、特に、「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」の大幅な増加があります。しかも、生後間もなくから50歳代を超える成人まですべてのライフステージにおいて増加が認められています。また、支援を必要とする場面の多くが、専門的な支援が届きにくい、地域の人々があたりまえに生活している日常的な環境で生じています。加えて、一時的、あるいは断続的に支援を必要とする状態から恒常的に支援を必要としている状態まで、必要な支援は個別性が高く内容も様々となっています。 残念ながら、従来の障害福祉・教育等の考え方や施策では、それらの支援の必要性に対して、十分に対応できない現状も生じています。発達障害児・者や保護者・家族に生きづらさがあっても、適切な支援によって大きく改善することを考えると、適切な時期を捉えて本人や家族が望む支援を柔軟に、よりきめ細かに提供することが求められています。 ところで、平成26年に、「障害者の権利に関する条約」、いわゆる「障害者権利条約」が批准されました。障害のある人たちが積極的に参加・貢献していくことができる社会、誰もが相互に人格と個性を尊重し支え合い、人々の多様な在り方を相互に認め合える社会を目指すことになりました。 また横浜市では、2020年に開催される予定のオリンピック・パラリンピックに向けた「共生社会ホストタウン」への登録をはじめとした取組も進められています。 今後は、これらの時代の変化に対応した支援が求められており、今回の「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者への具体的な施策の展開」を検討する上でも、多様性の尊重と地域社会における共生が、議論における大きなテーマの一つになりました。 本答申を作成するにあたり、横浜市発達障害検討委員会委員の皆様に熱くご議論を頂きました。また、横浜市発達障害検討委員会での検討内容を深めるため、発達障害支援に関わる皆様から貴重なご意見を頂きました。横浜市障害者施策推進協議会委員の皆様をはじめ、本答申の作成にご尽力を頂きました皆様に心からお礼を申し上げます。 横浜市においては、本答申をもとに具体的な施策を展開するとともに、地域社会の様々な主体が身近な存在として発達障害児・者を理解し、支援を担って頂けるようにあらゆる取組を推進していくことを期待しています。 本答申では、横浜市における「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者への具体的な施策の展開」の基本的な考え方として、その人にとって適切な時期に適切な支援につなぐことができれば、その人にとって明るい人生・未来につながるとして、「気づきの促進と未来に繋がる支援(Right Time & Bright Life)」という理念を提案しました。 発達障害のある人やその保護者・家族を含めたすべての市民が、「生きてて楽しい」と心から思える人生と社会を、オール横浜で構築されることを願っています。 令和2年6月 横浜市障害者施策推進協議会 会長  渡部 匡隆 第1章 検討の背景 1−1 国の取組  平成17年に発達障害者支援法が施行され、この中で、長く制度の谷間に置かれていた発達障害の定義が明確化し、障害福祉等に関する法制度上の位置づけが確立しました。  また同法では、それぞれの障害特性やライフステージに応じた支援を行うことに関する国及び地方公共団体の責務を定め、これに基づき、発達障害児・者への支援体制整備が行われてきました。 (1) 発達障害者支援法の改正  同法が施行されてから、発達障害児・者に対する支援は着実に進展し、発達障害に対する国民の理解も広がってきました。  しかし、同法の施行から10年が経過し、乳幼児期から高齢期までの切れ目のない支援など、時代の変化に対応した、よりきめ細かな支援が求められるようになったことから、発達障害者の支援の一層の充実を図るために、平成28年に法改正が行われました。  「改正発達障害者支援法」では、次の三点をポイントとしています。      1 ライフステージを通した切れ目のない支援  2 家族なども含めた、きめ細やかな支援  3 地域の身近な場所で受けられる支援 (2) 家庭と教育と福祉の連携「トライアングル・プロジェクト」  文部科学省及び厚生労働省が連携し、家庭と教育と福祉のより一層の連携を推進するための方策を検討する「トライアングル・プロジェクト」が発足し、平成29年度にプロジェクト会議が開催されました。  この検討を踏まえ、平成30年5月24日付で「教育と福祉の一層の連携等の推進について(30文科初第357号・障発0524第2号/資料編5(50ページ)参照)」が通知され、教育と福祉の連携、及び保護者支援を推進するための方策に関する積極的な取組の展開を、各指定都市市長等に求めています。 (3) 「障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針」  (平成18年厚生労働省告示第395号)  障害者総合支援法第88条及び児童福祉法第33条の20では、「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」を市町村が定めることを義務付けており、計画においては、障害福祉におけるサービスごとに必要な利用の見込み量を定めることとしています。  「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」の作成にあたって則すべき事項を定めた上記指針が、平成30年度から令和2年度までの両計画策定にあたり改正され(平成29年)、「発達障害者等に関する支援」が、相談支援の提供体制の確保に関する基本的考え方として明確に位置付けられました。  また計画の中で、「発達障害者等に対する支援」についての事項を指標として設定し、取り組むことが適当であるとされました。 1−2 横浜市の取組  国の指針を受け横浜市でも、発達障害児・者への支援体制の整備に向けた取組を推進してきました。 (1) 計画・プラン  障害福祉・教育等に関する市の計画・プランにおいて、発達障害児・者への支援の推進に係る方向性が掲げられています。 横浜市中期4か年計画(2018〜2021年度) 2030(令和12)年を展望した中長期的な戦略と計画期間の4年間に重点的に推進すべき政策を取りまとめた計画。 政策25「未来を創る子どもを育む教育の推進」 主な施策(事業)「特別支援教育の推進」 特別支援学校のセンター的機能等の活用による学校支援 通級指導教室の指導体制の強化 特別支援教育に携わる教員の専門性の向上 特別支援学校の教育内容の充実 政策31「障害児・者福祉の充実」 主な施策(事業)「障害児支援の拡充」 地域療育センターにおける地域支援の充実・待機期間の短縮 児童発達支援事業所や放課後等デイサービス事業所等における支援体制の拡充 横浜市障害者プラン(第3期:2015〜2020年度) 障害者基本法、障害者総合支援法及び児童福祉法に定める「障害者計画」、「障害福祉計画」及び「障害児福祉計画」として位置づけている、障害福祉施策に関わる中・長期的な計画。 ■ テーマ1「出会う・つながる・助け合う」 取組1−1「普及・啓発」 持続的な普及・啓発 学齢期への重点的な普及・啓発 取組1−2「相談支援」 相談談支援体制の再構築と充実 テーマ4「生きる力を学び・育む」 取組4−1「療育」 早期療育体制の充実 学齢障害児の支援の充実 取組4−2「教育」 療育と教育の連携による切れめのない支援 教育環境・教育活動の充実 教育から就労への支援 取組4−3「人材の確保・育成」 障害福祉従事者の確保と育成 テーマ5「働く・活動する・余暇を楽しむ」 取組5−1「就労」 一般就労の促進と定着支援の充実 横浜市子ども・子育て支援事業計画 (第1期:2015〜2019年度) 子ども・青少年施策に関する基本理念や各施策の目標・方向性などを定める計画。 (子ども・子育て支援法及び次世代育成支援対策推進法に基づく法定計画) 基本施策3 障害児への支援 地域療育センターを中心とした支援の充実 療育と教育の連携による切れ目のない支援を進める 学齢障害児に対する支援の充実 市民の障害への理解を促進するための取組を進める 横浜市教育振興基本計画 (第3期:2018〜2022年度) 「横浜教育ビジョン2030」(平成30(2018)年策定)の具現化に向けたアクションプランとして、5年間で進める施策や取組を定めた計画。 (教育基本法に基づく法定計画) 柱1「主体的な学び」 施策3「特別支援教育の推進」 全ての子どもが安心して学べる多様な学びの場の構築 一般学級在籍の特別な支援が必要な児童生徒への支援の充実 障害特性に応じた個別支援学級における教育の充実 特別支援教育相談システムの充実 柱14「切れ目のない支援」 施策1「福祉・医療との連携による支援の充実」 福祉との連携強化 (2) 横浜市発達障害検討委員会  発達障害者支援法施行と同時期の平成17年度に、横浜市障害者施策推進協議会の部会として「横浜市発達障害検討委員会」を設置しました。  これまで同検討委員会では、乳幼児期・学齢前期・学齢後期・青年期ごとに検討を行い、各ステージの課題や、ステージ間の切れ目のない支援等について議論を行ってきました。  これらの議論を踏まえ、様々な提案が施策化され、事業として実現しました。 第2章 平成30年度 横浜市発達障害検討委員会の取組 2−1 平成30年度 横浜市発達障害検討委員会の検討内容  近年、発達障害、特に「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」の大幅な増加に対し、従来の障害福祉・教育等施策では、十分に対応できていない現状があります(資料編4(46ページ)参照)。  こうした現状認識に基づき、平成30年度の横浜市発達障害検討委員会では、「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」について、改めてライフステージ全般に渡る課題整理と、施策の方向性に関する議論を行いました。 検討の経過 第45回検討委員会(平成30年11月)現状認識の共有と課題抽出 第46回検討委員会(平成30年12月)施策展開の方向性検討 第47回検討委員会(平成31年2月)施策展開の方向性確立 2−2 横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性 「平成30年度 横浜市発達障害検討委員会報告書」では、横浜市における、発達障害に関する医療・福祉・教育等施策を、次に掲げる6大項目・15小項目の方向性に基づき、再構築を行うべきであると整理しました。 横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性 T 本人への支援 1 本人がその人らしく生きるための支援の充実 2 当事者の居場所の充実 3 二次障害(ひきこもり等)への対応力向上 4 成人期の課題に対する、本人支援の充実 U 保護者及び家族への支援 1 保護者及び家族に対する支援の充実 V 支援機関の連携と役割分担 1 支援機関の役割分担の明確化等による、効果的・効率的な対応 2 ライフステージを通し、切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化 3 医療と福祉の連携強化とネットワークの拡充 4 サービス情報提供システムの充実 W 支援体制の強化・充実 1 就学前の対象者数増加に対する、支援体制の拡充 2 教育と福祉の連携等による、学齢期支援の強化 3 学齢後期における、支援の量的拡大と質的な向上 X 人材育成 1 発達障害に関する支援力を身につけた支援者の養成 Y 障害理解の促進・普及啓発 1 地域社会における共生の実現に向けた、社会全体の意識醸成 2 特に教育・就労の場面における、本人を取り巻く周囲への理解促進 2−3 喫緊に取り組むべき課題  2−2で示した6大項目・15小項目は、いずれも極めて重要であると考えます。  また、これらは相互補完的、かつ連続的・一体的であり、全てが実現することにより初めて、完成したシステムとなります。  しかし、全ての施策を一挙に実現することは現実的に困難であるため、【@重要性】【A緊急性】【B難易度(マンパワー・費用・時間の側面から)】の3つの視点を総合的に勘案した上で、次のページに掲げる項目については、特に喫緊に取り組むべきであると整理しました。 <「横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性」と「喫緊に取り組むべき課題」の関係図> 横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性(6大項目・15小項目)の中から、3つの視点を総合的に勘案して抽出したものが、【 喫緊に取り組むべき課題 】 「平成30年度 横浜市発達障害検討委員会報告書」では、これら「喫緊に取り組むべき課題」については、再構築に向けて令和元年度に検討を開始するとともに、令和3年度からの第4期障害者プラン等に反映させることが望ましい、としています。 また、それ以外の課題についても、順次検討を進め、可能な限り第4期以降の障害者プラン等に反映させることが望ましい、としています。 喫緊に取り組むべき課題 U 保護者及び家族への支援 1 保護者及び家族に対する支援の充実  発達障害の支援には、「本人」支援と並んで保護者及び家族支援が有効であり、重要である。  このため、保護者等の交流の場等を促進するために、新たにメンター制度の創設や、ペアレントプログラム(ペアレントトレーニング)の充実などを検討すべきである。 V 支援機関の連携と役割分担1 支援機関の役割分担の明確化等による、効率的・効果的な対応  支援の実施主体ごとの役割分担を明確にし、相互に連携し補完し合うことで、効率的・効果的な支援体制を構築する必要がある。  また、支援体制の中で中心的な役割を果たす機関を明確化し、その上で連携の仕組みを考えることが重要である。 2 ライフステージを通し、切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化  ライフステージごとの接続期において、切れ目なく、適切な支援に繋がることができる仕組みの整備が必要である。併せて、支援機関ごとの連携強化が重要である。  また、必要な情報がタイムリーに提供されるシステムの構築等とともに、本人及び保護者・家族に対し、適切な時期に、確実に支援が届くような仕組みづくり等の検討も必要である。 W 支援体制の強化・充実 1 就学前の対象者増加に対する、支援体制の拡充  就学前の発達障害児支援体制の拡充を行うべきである。  それに際しては、地域療育センターの機能見直しを抜本的に行うともに、関係する地域の支援機関が担うべき役割と方向性を明確にすることにより、効率的・効果的な支援体制の再構築及び必要な拡充を検討すべきである。  3 学齢後期における、支援の量的拡大と質的向上  学齢後期障害児支援事業等それぞれの支援組織が担うべき役割と方向性を明確にした上で、効率的・効果的な支援体制の再構築および必要な拡充を検討すべきである。 X 人材育成 1 発達障害に関する支援力を身につけた支援者の養成  今回対象とした児・者への支援に特化した、専門性の高い人材の育成が必要である。  また、専門性のあり方についても、改めて検討が必要である。  同時に、福祉・教育等関係者、企業、学校、地域社会など身近な支援者全般が、発達障害に関する適切な理解と対応を身につけることも求められている。 2−4 横浜市長からの諮問  「平成30年度 横浜市発達障害検討委員会報告書」を受け、令和元年5月27日付で、横浜市長より「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者への具体的な施策の展開」について、横浜市障害者施策推進協議会あてに諮問を受けました。  これに対し、本協議会の部会である、横浜市発達障害者検討委員会にて検討を進めることとなり、令和元年6月から令和2年2月にかけ、検討を行ってきました(資料編1(42ページ)参照)。 第3章 具体的な施策の展開について 3−1 「発達障害」の定義と、本答申における対象児・者について 「発達障害」の定義 発達障害者支援法では、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であり、その症状が通常低年齢において発現するもの」と定義されています。 また同法では、「発達障害者」について、「発達障害がある者であって発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受けるもの」と定義しています。 【参考図】主な発達障害の特性  ※ 発達障害情報・支援センター(国立障害者リハビリテーションセンター)ウェブサイト「発達障害を理解する」より引用 「広汎性発達障害」に、次の2つが含まれます。 自閉症 障害の特性として、 言葉の発達の遅れ コミュニケーションの障害 対人関係・社会性の障害 パターン化した行動・こだわり などがあります。 アスペルガー症候群 障害の特性として、 基本的に、言葉の発達の遅れはない コミュニケーションの障害 対人関係・社会性の障害 パターン化した行動 興味・関心のかたより 不器用(言語発達に比べて) などがあります。 また、 注意欠陥多動性障害(AD/HD) 障害の特性として、 不注意(集中できない) 多動・多弁(じっとしていられない) 衝動的に行動する(考えるよりも先に動く) などがあります。 また、 学習障害(LD) 障害の特性として、 「読む」、「書く」、「計算する」等の能力が、全体的な知的発達に比べて極端に苦手 などがあります。 このほか、トゥレット症候群や吃音(症)なども発達障害に含まれます。 平成25年に米国精神医学会が発行し、翌年日本語訳された「DSM-5(精神障害の診断・統計マニュアル第5版)」では、自閉症・アスペルガー症候群等が「自閉スペクトラム症」という言葉に統合されました。また、AD/HDの日本語訳が「注意欠如・多動症」とされました。 障害の特性は人によって様々で、複数の障害が重なって現れることもあります。また、発達段階や生活環境等によっても状態像は異なります。 知的な遅れを伴うことも、伴わないこともあります。 本答申における対象児・者  本答申は、2−4(10ページ参照)に記載したように、横浜市長からの諮問を受け検討した内容をまとめたものであり、その対象は「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」としています。  なお、発達障害の診断を受けている人だけではなく、診断を受けていなくても日常生活や社会生活に生きづらさを抱えている人を含みます。 3−2 前提となる考え方  ここでは、本答申における対象児・者への具体的な施策の展開について検討するにあたり、前提となる考え方について示します。 (1) 多様性の尊重と、地域社会における共生 本答申における対象児・者と「生きづらさ」  発達障害児・者は、定型発達と異なる認知・学習スタイルを持つことから、社会の中で少数派となりがちです。  また、物事の理解の仕方や興味関心等に偏りがあり、そのために「得意なこと」と「苦手なこと」の差が大きい、コミュニケーションが苦手といった特性が見られ、社会生活に柔軟に対応できない場合があります。  このように、発達障害の特性と社会の仕組みとの双方の関係性から、本答申における対象児・者が社会生活の中で「生きづらさ」を感じることが少なくありません。  さらに、こうしたことからストレスを感じたり、自己肯定感の低下を招いたりして、抑うつ症状や不登校・ひきこもり等の二次障害を引き起こすこともあります。 発達障害児・者を取り巻く社会の変化  現代の日本社会においては、コミュニケーション能力や効率性、また協調性や共感性などを一律に求められる場合が多くあります。それらは発達障害児・者が苦手とする領域であることから、そこに大きなギャップが生じやすく、結果として生きづらさの増大につながっていることが考えられます。  また、社会の価値観も画一化してきていることから、異なる認知・学習スタイルを持つ発達障害児・者が、いわゆる定型発達を軸として形作られた社会から孤立しやすい状況も生じやすくなっていると考えられます。 地域社会における共生の実現に向けて  現代の日本社会における発達障害児・者の生きづらさを解消するためには、本人や保護者・家族への支援と並んで、それらを取り巻く社会全体の意識変革が必要です。このことは、ICF(国際生活機能分類)(13ページ参照)において、「環境因子」も含めた視点が必要であると示されているとおりです。発達障害は、その特性が一般社会の中に十分に浸透していないが故に、社会全体の一層の努力が必要と言えます。  地域社会における共生(注1)の実現に向け、様々な多様性を尊重し、受け入れていく社会風土の醸成を進めていくことが重要となります。 (注1)地域社会における共生    地域社会の中で、障害の有無によって分け隔てられることなく、誰もがそれぞれの人格と個性を尊重し合い、多様性を認めながら生きていくこと。また、誰もが積極的に地域社会に参画できること。 【コラム】ICF(国際生活機能分類)について  「ICF(国際生活機能分類)」とは、世界保健機関が平成13年に採択した、人間の生活機能と障害に関する状況を記述することを目的とした分類です。  なお、「ICF」は「International Classification of Functioning, Disability and Health」の略。  前身のモデルでは、障害のレベルを「機能障害」、「能力障害」、「社会的不利」の3つに分類し、「機能障害→ 能力障害→ 社会的不利」という一方向の流れで捉えていました。  一方ICFでは、機能障害は「心身機能・身体構造」、能力障害は「活動」、社会的不利は「参加」と、プラスの言葉を用いています。  また「環境因子」と「個人因子」から成る、「背景因子」という新しい観点を加えています。  このことにより生きづらさの原因を、その人を取り巻く環境や、その人の特徴(機能障害・能力障害に由来しないもの)等にも関連づけて捉えるようになりました。  例えば、健康状態が悪化して身体機能が低下しても、環境を整えることで活動や社会参加が可能になるなど、生活機能と障害を、健康状態と背景因子の相互作用として考えます。 図:ICFの構成要素と相互作用 健康状態(疾患・外傷、ストレス状態等) 「生活機能」として、 心身機能・身体構造(心身の働き) 活動(生活行為) 参加(家庭・社会への関与・役割) 「背景因子」として、 個人因子(年齢、性別、価値観、ライフスタイル等) 環境因子(社会、建物、家族、友人、サービス等) これらが相互に影響し合い、人間の生活機能と障害に関する状況を構成します。 (2) 気づきの促進と未来につながる支援(Right time & Bright life)  横浜市では、発達障害を含む障害施策全般に関して、ライフステージの早い段階で障害を発見し、療育に結び付ける「早期発見・早期療育」の理念を掲げてきました。  しかし、本答申における対象児・者は、その障害特性が一見して分かりにくいため、ライフステージの早い段階では、本人や周囲の人々が、本人の発達障害に気づかない場合があります。結果として、その後のライフステージで、本人が生きづらさを感じてもその原因が分からず、また周囲からの理解を得られず、社会の中でつまずいてしまうことがあります。  そのため、いかなるライフステージにおいても、本人の生きづらさが生じる前、あるいは生じたときに、保護者・家族や周囲の人々が早期に本人の発達障害に気づき、必要に応じ適切な支援につなぐことができる体制の構築が必要です。  その人にとって適切な時期(Right time)に適切な支援につながることができれば、その人にとって明るい人生・未来(Bright life)につながっていくと考え、この理念を「気づきの促進と未来につながる支援(Right time & Bright life)」と表します。  本答申における対象児・者への施策の再構築を検討するにあたっては、「早期発見・早期療育」と併せて、この考え方にも留意しました。  これらを前提としながら、対象児・者への具体的な施策の展開が検討されることを期待し、以降で、今後の施策展開のヒントとなる視点を述べていきます。 3−3 本答申の構成について  本答申では、横浜市が対象児・者への施策を展開するにあたりヒントとなる視点を、2−2(7ページ参照)で「横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性」として掲げた6大項目・15小項目ごとにまとめて示します。 【再掲】横浜市発達障害施策の再構築に係る方向性(平成30年度 横浜市発達障害検討委員会報告書より) T 本人への支援 1 本人がその人らしく生きるための支援の充実 2 当事者の居場所の充実 3 二次障害(ひきこもり等)への対応力向上 4 成人期の課題に対する、本人支援の充実 U 保護者及び家族への支援 1 保護者及び家族に対する支援の充実 V 支援機関の連携と役割分担 1 支援機関の役割分担の明確化等による、効果的・効率的な対応 2 ライフステージを通し、切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化 3 医療と福祉の連携強化とネットワークの拡充 4 サービス情報提供システムの充実 W 支援体制の強化・充実 1 就学前の対象者数増加に対する、支援体制の拡充 2 教育と福祉の連携等による、学齢期支援の強化 3 学齢後期における、支援の量的拡大と質的な向上 X 人材育成 1 発達障害に関する支援力を身につけた支援者の養成 Y 障害理解の促進・普及啓発 1 地域社会における共生の実現に向けた、社会全体の意識醸成 2 特に教育・就労の場面における、本人を取り巻く周囲への理解促進 3−4 6大項目・15小項目に関する視点 大項目T 本人への支援 この項目の視点(ポイント) 本人の抱える生きづらさを解消し、持てる力を活かすための支援が必要です。 また、多様性を認め合うことができる社会としていくことが必要です。 T−1 本人がその人らしく生きるための支援の充実 (1) 現状と課題  社会生活の中でつまずいたり否定されたりした経験や適切な発達障害の理解に基づいた支援を受ける機会に恵まれなかったこと等により、本人の自己肯定感が低下していたり、十分に育まれていなかったりすることがあります。  現代社会の仕組みの中では、画一性が求められることが多く、本人が持てる力を活かすことができないことがあります。  自己選択、意思決定の場面では、自らが主体的に選択・決定し、表明することが求められますが、発達障害児・者は、情報を整理して意思を形成すること、自分の意思を表出することが苦手な場合があります。 (2) 求められること  自己理解の促進と、自己肯定感の形成  本人が、自分の「得意なこと」、「苦手なこと」を理解し、肯定的に捉えられるようになることが重要です。このためには、自己肯定感を形成し、持てる力をどのように社会生活に活かしたらよいか学ぶ機会が確保されていることが必要です。  本人の持てる力を活かす機会の確保  社会の中に、本人が主体的に、持てる力を活かすことができる機会や場所が確保されていることが重要です。  そのためには、本人を取り巻く社会の側も、発達障害の特性を理解し、発達障害児・者も含めた人それぞれの多様性を認め合い、多様な社会参加の仕方を受け入れることができるよう、意識を変えていくことが必要です。  本人の自己選択、意思決定に向けた支援  本人が自己選択、意思決定する場面で、情報の整理が難しければ、本人の希望を確認し、気持ちや考えに寄り添って、本人が選択・決定しやすくなるような支援が必要です。  支援にあたっては、本人の障害特性を総合的に見立てた上で、支援のタイミングや方法などを考える必要があります。 T−2 当事者の居場所の充実 (1) 現状と課題  本人が、社会生活の中で困り事が生じたとき等に、身近に相談できる人や場所がなく、あるいはその存在を知らず、適切な支援を受けられずに困り事が解決できない状態が続くことがあります。  現代社会の仕組みの中では、画一性が求められることが多く、本人が持てる力を活かすことができないことがあります。 (2) 求められること  本人が必要とするときに支えとなる場所  身近な地域の中に、本人が必要とするときにすぐに相談でき、必要に応じて適切な支援が受けられる、精神的な支えとなる人や場所が必要です。  本人の力を活かすことのできる場所  社会の中に、本人が主体的に、持てる力を活かすことができる機会や場所が確保されていることが必要です。 T−3 二次障害(ひきこもり等)への対応力向上 (1) 現状と課題  本人が、社会生活の中でつまずいたとき、適切な支援を受けられずに困り事を解決できない状態が続くと、社会生活から距離を置いて社会との接点がなくなり、どこにも相談できなくなることがあります。  本人が社会生活から離れてしまった場合、その期間が長期化するに連れ、社会生活に戻ることが難しくなります。  発達障害児・者の保護者や家族が、本人への対応に悩みを抱えていても、どこにも相談できず、困り事を解決できない状態が続いたり、社会的孤立を感じたりすることがあります。  また、本人に自己肯定感が十分に育まれずに成長した場合、社会生活の中でつまずきが生じたときの、不登校・ひきこもり等の二次障害発生のリスクが高まります。 (2) 求められること  地域の中で本人や保護者・家族を継続的に見守る体制の構築  本人や保護者・家族が困り感を感じているときもそうでないときも、本人や保護者・家族に継続的に寄り添うことができるよう、地域全体が見守りの「目」を育てることが必要です。  また、本人や保護者・家族がどこにも相談できず、あるいは、本人が社会から距離を置いて、困り事を解決できない状態にあることに「気づく力」をつけ、本人や保護者・家族の困り感をキャッチし、必要な支援機関等につなぐことができるようになることが望まれます。  支援機関のアウトリーチによる、本人や保護者・家族へのアプローチ  支援機関には、アウトリーチの展開による、本人や保護者・家族への支援が求められます。  支援機関は、本人や保護者・家族に対し、その役割やどのような支援が可能かを周知し、顔の見える関係を築くとともに、本人や保護者・家族が社会との接点を失う前に、「支援の種」を蒔いておくことが重要です。  例えば、ひきこもり状態に至った場合には、支援機関が直接本人の生活の場に出向く、家庭訪問等のアプローチが有効な場合があります。ただし、本人の状態をアセスメントするなど、十分な準備の上に実施しないと、逆に本人のひきこもりを強めてしまうことに留意する必要があります。  また、アウトリーチには専門的技術が求められるため、複数の支援機関が連携・役割分担し、支援を展開することも求められます。     多様性を認め合い、多様な社会参加ができる社会  生きづらさを抱えた発達障害児・者が、少しずつでも社会に参加し、成功体験とともに「安心して失敗する体験(注2)」を重ねることで、自己肯定感を形成することが必要です。また、発達障害児・者が持てる力を活かすことができる、多様な社会参加の仕方が社会に用意されていることが必要です。  そのために、社会の側にも、発達障害の特性を理解し、発達障害児・者も含めた多様性を認め合うことが求められます。  (注2)安心して失敗する体験  失敗は悪いことや怒られることではなく、失敗したらまたチャレンジできることを本人が理解し、次に失敗しないように対策を考え試行錯誤することで成長すること。  自己肯定感や自己表現力を身につけるための支援  本人が、自分の「得意なこと」、「苦手なこと」を理解し、自己肯定感を維持するとともに、自分自身の気持ちや考えを表明できるように支援し、二次障害の発生を防ぐことが必要です。 T−4 成人期の課題に対する、本人支援の充実 (1) 現状と課題  成人期においては、例えば就職や親元を離れて自立するなどで環境が大きく変わる場合、「社会にスムーズに参加すること」が課題となります。  社会参加に向けて、自己理解を深めること、様々な体験を通して新たな生活に向けた準備をすること、日々の生活上の課題に対応できる力を身につけることなどが必要です。  発達障害児・者は、これらが十分に身についていない場合があるため、必要に応じて学ぶ(注3)ことが必要です。  また、家族も、本人が社会参加するにあたって必要な情報が把握できていなかったり、本人への関わり方が分からなかったりする場合があるため、支援が必要なことがあります。   (注3) 学ぶ  他者との関わり方など社会生活を送る上で必要な力は、一般的に、成長の過程で無意識のうちに身につくものと考えられている。しかし、発達障害児・者は、抽象的なものや相手の気持ちを理解することなどが難しい場合があるため、これらの力を、それぞれの認知スタイルに合わせた学習方法により学ぶことが必要である。既に社会生活に生きづらさを感じていれば、認知スタイルに合った学び方で、改めて学ぶ機会を確保することが必要である。  一方で、社会参加に向けた準備を行う中で画一性が求められ、過度に周囲に合わせようとするあまり、本人が疲弊したり、自己肯定感が低下したりする場合があります。特に、これまでの生活でつまずいたり否定されたりした経験等により、自己肯定感が低下している場合などは、社会参加がより難しいこともあります。  就労系障害福祉サービスを提供する事業所の増加や、「横浜市障害者就労支援センター」の整備等により、発達障害者に対する就労支援は広がりつつあります。  一方で成人期には、「親元を離れての生活」、「社会的役割の変化」、「余暇の過ごし方」、「結婚・子育て」、「家族の不測の事態」、「親亡き後」等の生活面の課題にも直面することとなります。  しかし、こうした成人期特有の生活面の課題等に対応するための支援は、まだ十分ではないのが現状です。  本答申における対象児・者は、その障害特性が一見して分かりにくいことが特徴的です。そのためライフステージの早い段階では、本人や周囲の人々が、本人の発達障害に気づかず、成人期になって様々な課題に直面する中で、社会の中で生きづらさやつまずきに気づき、初めて発達障害があることが分かる場合があります。 (2) 求められること  社会参加に向けた支援  成人期までの間に、本人が自己理解を深め、「社会に出ること」、「自立すること」が具体的にどのようなことかを学ぶ機会の提供や、日々の生活上の課題に対応できる力を身につけるための支援が必要です。  また、家族に対しては、本人が社会参加をするにあたりどのような取組が必要か、本人が社会に出た後に受けられる支援などについて、情報提供が必要です。  本人の自己肯定感の形成に向けた支援  本人が、自分の「得意なこと」、「苦手なこと」を理解し、肯定的に捉えられるようになることが重要です。このためには、自己肯定感を形成し、持てる力をどのように社会生活に活かしたらよいか学ぶ機会が必要です。  多様性を認め合い、多様な社会参加ができる社会  生きづらさを抱えた発達障害児・者が、少しずつでも社会に参加し、成功体験とともに「安心して失敗する体験(18ページ参照)」を重ねることで、自己肯定感を形成することが必要です。また、発達障害児・者が持てる力を活かすことができる、多様な社会参加の仕方が社会に用意されていることが必要です。  そのために、社会の側も、発達障害の特性を理解し、発達障害児・者も含めた多様性を認め合うことが求められます。  生活面の支援の充実  就労面の支援と併せて、生活面の支援の充実が求められています。本人の日々の生活に「伴走」し、成人期に直面する「親元を離れて生活すること」、「社会的な役割の変化」、「余暇の過ごし方」、「結婚・子育て」、「家族の不測の事態」、「親亡き後」等の生活面の課題への対応を支援すること、また困り感が生じたときにスムーズに対応できるよう、準備しておくことが必要です。  成人期まで発達障害が見過ごされた人への支援  ライフステージの早い段階では発達障害があることに気づかれず、成人期に生きづらさやつまずきに直面した人に対しても、支援が必要です。  また、成人期に限らずいかなるライフステージにおいても、本人の生きづらさが生じる前、あるいは生じたときに速やかに、保護者・家族や周囲の人々が本人の発達障害に気づき、適切な支援につなぐことができる体制の構築が必要です。 大項目U 保護者及び家族への支援 この項目の視点(ポイント) 本人だけでなく、保護者や家族も悩みを抱えていたり、社会的に孤立していたりすることがあります。そのため、保護者や家族への支援も重要です。 U−1 保護者及び家族に対する支援の充実 【喫緊】 (1) 現状と課題  「家庭と教育と福祉の連携」に基づく取組   平成30年5月24日付で「教育と福祉の一層の連携等の推進について(30文科発第357号・障発0524第2号/資料編5(50ページ)参照)」が通知され、次の項目に取り組むよう求められています。   保護者支援のための相談窓口の整理   保護者支援のための情報提供の推進   保護者同士の交流の場等の促進   専門家による保護者への相談支援  発達障害児、特に事業所で長時間の療育を行うことが難しい未就学児の成長には、日頃接している保護者への支援が有効であると考えられます。しかし、支援機関において上記の取組の一部は実施されているものの、市としての取組が十分ではなく、体系的な支援を提供できる体制にはありません。  きょうだい児など家族全体への支援  地域療育センター等による未就学児から小学校低学年までの保護者支援と比較して、小学校高学年以降の児童の保護者への支援は量的に少なく、その充実が求められています。  また、本人や保護者への支援を行うにあたって、きょうだい児への影響について配慮するなど、より広い視点から家族全体への支援が求められています。  青年期、成人期においては、家族からの相談で支援が始まることが多く、家族が見通しの立たない事態に大きな不安を抱えている場合があります。ともすれば、家族全体が孤立することがあるため、家族の相談を継続的に受け止める仕組みが求められています。  学校における保護者支援  小学校の通級指導教室では、保護者が、保護者担当教員から学校での指導内容について説明を受ける環境が整っています。  しかし、保護者のニーズに十分対応していくには、保護者が相談できる機会や環境をより一層整えていく必要があります。 (2) 求められること  保護者や家族への有効な情報提供  保護者や家族が、相談したり障害福祉サービス等を利用したりするために必要な情報を適時入手できるよう、ICTの活用等も視野に入れた情報提供の方法について検討する必要があります。      保護者への共感的な相談支援の提供  保護者同士の交流の場を設けるピアサポートの推進や、ペアレントメンター(注4)を養成する研修の実施等により、保護者が身近な場所で相談を受けることができるような環境を整えることが求められます。  (注4)ペアレントメンター  発達障害者の子どもを持つ親で、その経験を活かし,子どもが発達障害の診断を受けて間もない親などに対して助言を行う者。  ペアレント・トレーニングの提供  ペアレント・トレーニング(注5)を実施するファシリテーターを養成する研修の実施等により、保護者が発達障害の特性を踏まえた本人への接し方を学ぶ機会を提供できるようにすることが求められます。  (注5)ペアレント・トレーニング  発達障害児の保護者が、子どもの行動を理解したり、ほめ方やしかり方を学んだりするための支援。  本人の年齢や家族構成に応じた保護者への包括的支援の提供  保護者支援の具体的な実施方法について議論する際は、小学校高学年以降の保護者支援やきょうだい児支援等、家族構成に応じた多角的な視点からの支援を検討することが必要です。  保護者・家族支援の充実  障害福祉サービス等事業所の支援者には、本人だけでなく、保護者や家族を含めた支援の必要性を理解し、本人や保護者・家族が置かれている状況を含めてアセスメントする技術を身につけることが求められます。  また、小中学校においては、保護者・家族と教員が本人の障害特性等について共通理解を持ち、必要な時に適切な支援を受けられる保護者支援体制づくりが必要です。 大項目V 支援機関の連携と役割分担 この項目の視点(ポイント) 支援機関が、それぞれの強みを生かして役割分担・連携し、効果的な支援を行うことにより、地域社会全体で包括的な支援体制を構築することが必要です。 縦軸の連携(ライフステージごとの切れ目のない連携)、横軸の連携(支援機関ごとの連携)の両方が必要です。 V−1 支援機関の役割分担の明確化等による、効果的・効率的な対応 【喫緊】 (1) 現状と課題  平成17年に発達障害者支援法が施行され、発達障害児・者に対する支援体制や障害福祉サービス等は重層的に整備されつつあります。一方で、本人や保護者・家族が、どの相談支援機関やサービスを選択すればよいか分からず、あるいは知らず、それらを十分に活用できていない場合があります。  【参考】「横浜市相談支援事業実施要綱」に基づく、地域の相談支援機関:資料編6(54ページ)参照     障害児・者を主たる支援対象としない機関(保育所・幼稚園、学校、就労先、地域ケアプラザ等)でも、発達障害児・者(発達障害の可能性のある児・者を含む)が多く見られます。  その中で本人が、発達障害の特性についての理解や合理的配慮を得られず、生きづらさを抱えている場合があります。 (2) 求められること  地域社会全体の、包括的な支援体制の構築  障害児・者を主たる支援対象としない機関による「0次支援(注6)」も含め、地域社会全体で包括的な支援体制を構築することが必要です。  (注6) 0次支援  障害児・者を主たる支援対象としない機関が、身近な地域の中で、発達障害児・者やその保護者・家族が抱える生きづらさに早期に気づき、受け止めること。また、それを抱え込まず誰かに相談すること。このようなことが、障害児・者への相談支援機関(主に指定特定相談支援事業所・一次相談支援機関)等による適切な対応につながるきっかけとなる、との意味で、本答申では「0次支援」と称することとする。  包括的な支援体制の構築にあたっては、次のようなものが考えられます。  ア 身近な地域における、気軽に相談できる場所  相談支援機関の利用に抵抗感や「敷居の高さ」を感じている本人や保護者・家族が、身近な地域(注7)の中に気軽に相談できる場所があることが重要です。  こうした場所を増やすためには、発達障害の特性が理解され、発達障害児・者を含めた人々の多様性が、地域社会の中で理解、尊重されるようになることが必要です。  (注7) 身近な地域  本答申では、行政区域や物理的な距離の近さだけではなく、心理的な距離感や親和性、アクセスのしやすさなど、多面的に捉えている。  イ 気づく力とつなぐ力の育成  本人や保護者・家族は、生きづらさを感じていることもあれば、困り感を感じていない、あるいは困り感を表出できない場合もあります。  障害児・者を主たる支援対象としない機関には、こうした生きづらさや困り感に早期に気づき、本人や保護者・家族に寄り添う視点を持って受け止めることが求められます。  また、その気づきをその後の適切な支援につなげるために、抱えこまず誰かに相談し、次につなぐことが求められます。  これらの「気づく力とつなぐ力」を育成するためには、発達障害への専門性の高い相談支援機関が、障害児・者を主たる支援対象としない機関に対して研修を実施する、発達障害に気づいた際の相談先となる窓口を明確化する等の取組が必要であり、その具体的な内容を検討していくことが必要です。  ウ 支援者に対する支援の拡充  地域社会全体で包括的な支援体制を構築するためには、横浜市の相談支援体制の重層性(資料6(54ページ)参照)を生かした、「支援者に対する支援」の拡充が求められます。   V−2 ライフステージを通した切れ目のない支援を行うための、コーディネート機能の強化 【喫緊】 (1) 現状と課題  V−1で記載したように、発達障害児・者に対する支援体制や障害福祉サービス等は重層的に整備されつつあります。一方で、本人や保護者・家族が、どの相談支援機関や障害福祉サービス等を選択すればよいか分からず、あるいは知らず、それらを十分に活用できていない場合があります。  ライフステージを通した切れ目のない支援を実現するためには、従前の支援機関で把握した支援内容や情報が、次のライフステージの支援機関に適切に引き継がれることが大切です。  しかし、ライフステージの変化に伴い支援機関が変わる際、支援内容や情報が適切に引き継がれなかったり、支援機関の連携がスムーズにいかなかったりする場合があります。  学校においては、保育所・幼稚園から小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、特別支援学校へのつなぎ役を、特別支援教育コーディネーター(注8)が担っています。また、乳幼児期から学校卒業後までの長期的な視点で作成される計画により、情報共有と引継ぎを行っています。しかし、これらが組織的に行われていないなど、十分ではない状況もあります。  (注8)特別支援教育コーディネーター  校内や福祉、医療等の関係機関との間の連絡調整役として、あるいは、保護者に対する学校の窓口として、校内の関係者や関係機関との連携協力を図る役割を担う教員。  本人に学校や就労先でつまずきが生じた場合、特に、退学・退職した場合は、学校や就労先を通じて実施していた支援が途切れるだけでなく、本人と社会との接点も途切れ、相談先がなくなることがあります。  本人や保護者・家族が相談支援機関や障害福祉サービス等の利用を望まない場合、そのリスクはさらに高まります。  なお、個人情報保護の観点から、本人や保護者・家族の同意がない場合、従前の支援機関で把握している支援内容や情報を引き継ぐことができないことに留意する必要があります。また、支援機関の都合による情報共有とならないよう、注意が必要です。 (2) 求められること  ライフステージを通した切れ目のない支援の実現のために、重層的な支援の仕組みの中から、本人の障害特性や困り感に応じた、適切な支援機関や障害福祉サービス等をコーディネートする機能が必要です。  ライフステージごとの特徴を捉えた、切れ目のない支援  発達障害に起因する生きづらさが表面化する時期は、人によって異なります。また、それまで大きな生きづらさを感じなかった場合でも、ライフステージの変化により周囲との関わり方が変化する中で、生きづらさが生じることがあります。  それぞれのライフステージに特徴的な困り事を捉えつつ、切れ目のない支援を行っていくことが重要です。  接続期における、「のりしろ」を捉えた連携  ライフステージが変化しても切れ目なく支援を行うためには、ライフステージが変化する前の段階から、本人や保護者・家族と支援機関、あるいは支援機関同士が顔の見える関係を構築し、次のステージに向けた準備を行うことが重要です。  また本人や保護者・家族が希望する場合に、それまでの支援内容や情報を、必要に応じて新たな支援機関に提供できる仕組みが求められます。  特別支援教育コーディネーターの機能の強化  保育所・幼稚園から高等学校まで切れ目なく支援を行うためには、関係機関、学校間、校内で情報共有や情報交換がしやすい仕組みづくりが必要です。  切れ目のない支援に特別支援教育コーディネーターの果たす役割は大きいと言えます。特に小中学校、義務教育学校においては、特別な支援を要する児童生徒に対して、一人ひとりに寄り添ったきめ細かな教育を推進するために、特別支援教育コーディネーターを中心としたチームで対応する組織力を高める必要があります。  所属先を失う手前での、支援機関へのつなぎ  本人に学校や就労先でつまずきが生じ、退学・退職する場合は、その手前で、必要な支援機関につなぎ、支援や見守りが途切れないような体制を構築することが必要です。  障害福祉サービス等の利用を望まない本人や保護者・家族を支援する仕組み  本人や保護者・家族が相談支援や障害福祉サービス等の利用を望まない場合にも支援や見守りができるよう、0次支援(23ページ参照)を含めた、地域社会全体による包括的な支援が必要です。  このために、地域社会全体が支援力を身につけることができるよう、発達障害への専門性の高い相談支援機関からの支援が求められます。 V−3 医療と福祉の連携強化とネットワークの拡充 (1) 現状と課題   発達障害への関心が高まり、自身や子どもの発達障害を疑うなどして、医療機関の受診を希望する人が増加しています。しかし、発達障害に対応できる医療機関は増加しているものの、ニーズに対し十分ではありません。  また、精神科以外の診療科でも、発達障害児・者が安心して受診できる医療機関が少ない現状があります。  なお、専門医療は、本答申の対象児・者に留まらず、知的障害や知的に遅れのある発達障害(特に青年期以降)についても不足しており、抜本的な対策が求められます。  適切な支援を見極めるために、医療的な支援は重要です。しかし、社会生活の中でどのような生きづらさがあるか、その解消に診断をどのように活かしたいか、本人や保護者・家族の認識や見通しがないまま受診に至ると、発達障害の診断を受けても自己理解が深まらず、その後の支援につながらないことがあります。 (2) 求められること  医療につながる前後の、十分なニーズ整理  支援機関等は、医療機関を受診する前に、本人や保護者・家族の生きづらさの原因を整理し、なぜ診断を必要とするのか、診断結果に基づきどのような支援を希望するのかアセスメントを十分行うとともに、それらを本人や保護者・家族と共有しておくことが必要です。  【参考】 発達障害における診断とは(「横浜市発達障害検討委員会 平成24・25年度のまとめ」より抜粋)  発達障害における「診断のニーズ」は、医学的な診断だけではなく、なぜ診断を必要としているのかというその手前のことや、診断を受けることによるメリットなどでもある。  双方の理解には時間を要するため、そこをある程度相談支援機関が整理をした上で医療機関に繋ぐこと、あるいは、医療機関に来た方を一度相談支援機関に帰して、協力しながら行っていくことなどが、「発達障害の診断」なのではないかと考えられる。  本人の自己理解の促進と、地域社会全体の支援力向上  発達障害の診断がなくても、支援機関が適切な支援を行うことで、本人や保護者・家族の障害理解が促進され、生きづらさが解消される場合があります。  診断は支援のきっかけの一つであることを認識し、支援機関のみならず地域社会全体の発達障害への支援力を高めることにより、本人の生きづらさを解消していくことが求められます。  医療機関の連携の検討  発達障害に対応できる精神科の医療機関が、地域療育センター等の支援機関と地域における発達障害に関するネットワークを構築し、診断、困難ケースへの対応、安定期の継続医療等について役割分担するなどして、発達障害児・者が必要な時に必要な医療を提供できるような体制作りを検討する必要があります。  また、精神科以外の診療科に発達障害の特性やその対応について情報提供するなどの支援を行い、発達障害児・者の受け入れを拡大していくことが必要です。 V−4 サービス情報提供システムの充実 (1) 現状と課題   平成17年に発達障害者支援法が施行され、発達障害児・者に対する支援体制や障害福祉サービス等は拡大・重層化しており、ライフステージごとに多様な選択肢が用意されています。  一方で、本人や保護者・家族が、今後のライフステージにおける支援の仕組みを把握したり、障害福祉サービス等の利用について見通しを立てたりすることができず、その選択や決定に難しさを感じる場合があります。  また、本人や保護者・家族が、相談支援機関の利用に抵抗感や「敷居の高さ」を感じて敬遠する場合、必要な情報を入手できないことがあります。 (2) 求められること  効果的な情報提供の仕組み  本人や保護者・家族が、必要な情報を適切な時期に手軽に入手できるよう、ICTの活用等も視野に入れた効果的な情報提供の仕組みについて検討する必要があります。 大項目W 支援体制の強化・充実 この項目の視点(ポイント) 支援機関が役割分担を明確にし、連携を図ることにより、効果的な支援を一層充実させていくことが求められます。 W−1 就学前の対象者数増加に対する、支援体制の拡充 【喫緊】  (1) 現状と課題   発達障害児の増加に伴い、地域療育センターの利用希望者は10年前の1.9倍となっており、発達障害を専門的に診断できる医師も不足していることから、「医師の診断を経て利用が開始される」従来の仕組みでは、十分な支援が困難となっています。  このため、利用申込みの後、ソーシャルワーカーや心理職などの専門職が速やかに保護者と面談を行い、支援を開始できる仕組みを試行し、保護者の不安解消などに一定の成果を上げています。  保育所や幼稚園など、障害児を主たる支援対象としない機関でも、発達障害児やその可能性のある児童が増加しており、研修などにより発達障害について学んでいるものの、園によってはその対応に苦慮しています。発達障害があることに保護者や家族等が気づいていない場合は、障害児保育の支援策が利用できず、園の負担が非常に大きい場合もあります。  児童発達支援事業所の増加、保育所や幼稚園での障害児の受入の拡大に伴い、これらの機関と地域療育センターを並行して利用する児童が増加しており、地域療育センターに求められる役割が変化しています。 (2) 求められること  地域療育センターにおける療育体制の抜本的な見直し  地域療育センターは、これまでも、利用希望者の増加やニーズの多様化に応じ、学校支援事業や児童発達支援事業など、新たな取組を実施してきました。しかし、昭和59年の「障害児地域総合通園施設構想(以下「総通構想」という。)」に基づく、通園療育を中心とした組織体制の枠組みの中では、これ以上の変化に対応した取組を行うことは困難となっています。本答申における対象児も含めた障害児の療育体制の充実を図るためには、総通構想を刷新して新たな地域療育センター像を構築し、その実現に着実に取り組むことが必要です。  なお、見直しにあたっては、本答申の範囲を超える内容も含まれることから、本答申の内容及び次の点を考慮し、別途、検討の場を設けることが必要です。  「医療前置」の支援から、相談等の福祉型支援を拡充した「総合的なチームによる支援」への転換  保育所や幼稚園等との並行通園児が利用しやすい集団療育の提供  (多様な集団療育の頻度や内容設定、並行通園先へのアウトリーチによる支援等)  総合評価機能に基づく、専門性の高い障害児相談支援の拡充  関係機関等の対応力向上につながる支援の充実とそれに対応できる職員の確保・育成  きょうだい児を含む家族への支援の充実  保育所や幼稚園における対応力の向上  保育所や幼稚園職員が発達障害への理解を深め、保育・教育の質をさらに高める必要があります。なお、発達障害児への個別対応を行うだけではなく、周囲の子どもを含めた保育・教育全体の質を高めるという視点が必要であり、保育・教育の現場での学びが必要です。  また、進学時には、保育所等と小学校の違いを踏まえた丁寧な移行支援が求められています。  発達障害児に関わる関係機関の理解促進  障害児支援の専門機関だけでなく、障害児を主たる支援対象としない機関等でも、発達障害への理解を深め、それぞれの専門性の中で適切な配慮を行うことが必要です。  小学校期までの発達障害児については、地域療育センターの専門職による実践的な事例検討や研修など、関係機関支援の充実が求められています。 W−2 教育と福祉の連携等による、学齢期支援の強化  (1) 現状と課題  市立小中学校では、「横浜型センター的機能(注9)」による学校支援の活用により、子どもの理解や対応等への助言を受け、対象児童生徒が他の児童生徒と同じように学校生活が送れるよう支援しています。地域療育センター等による支援の充実もあり、様々な場面で特別支援教育に係る支援を利用しやすくなっていますが、活用方法が全ての学校に浸透しているとは言えません。 (注9)横浜型センター的機能  市立学校における幅広い支援ニーズに対し、教員等に対する助言や援助を行うこと。「特別支援学校によるセンター的機能」、「通級指導教室による支援センター機能」、「地域療育センターや学齢後期障害児支援事業による学校支援」、「専門家支援チーム(医師、臨床心理士等)による指導・助言」をまとめたものを指す。  小中学校では、「特別支援教室(注10)」、「通級指導教室(注11)」など、多様な学びの場を用意していますが、「特別支援教室」については、運営方法や指導内容・方法が確立されていないなどの理由から、全ての学校では活用しきれていません。 「通級指導教室」についても、支援を必要とする児童生徒の増加に伴う過大規模化により、十分な指導回数が確保できていません。また、「個別支援学級(注12)」においても、児童生徒の障害の状態が多様であるため、個々に応じた指導が十分に行えない状況です。 (注10)特別支援教室  児童生徒が、在籍する学級(一般学級、個別支援学級)を離れて、特別の場で学習するためのスペース。在籍学級で学習や学校生活を送る上で困難さを抱える児童生徒に対し、「教科指導」、「登校支援」や「自立活動の視点を取り入れた指導」を行う。 (注11)通級指導教室  小中学校の一般学級に在籍している弱視、難聴、言語障害、情緒障害、自閉症、LD・ADHDなどの障害がある児童生徒のうち、一般学級の学習に概ね参加できる児童生徒に、各教科等の指導は主として一般学級で行いつつ、個々の障害の状態に応じた特別の指導を特別の指導の場で行う教育形態。通常、在籍する小中学校ではなく、通級指導教室のある学校へ通い、指導する。 (注12)個別支援学級  学校教育法第81条の規定に基づき、「知的障害」、「自閉症・情緒障害」、「弱視」それぞれに設置する学級。児童生徒一人ひとりの教育的ニーズに応じて、身に付けさせたい資質・能力を明確にし、指導・支援する。  学校と放課後等デイサービス、保育所等訪問支援や障害児相談支援などを行う障害福祉サービス等事業所で、互いの制度理解、取組内容の共有等の連携が十分ではありません。 (2) 求められること  地域療育センターとの連携  各児童生徒の状態像を的確に把握するために、地域療育センター等との連携が必要ですが、昨今では「横浜型センター的機能」による支援の充実により、学校が活用できる支援の選択肢が広がっていることから、連携のあり方について、適宜見直すことが必要です。  「横浜型センター的機能」の活用促進と様々な学びの場の活用  一般学級に在籍する発達障害のある児童生徒への適切な支援や、その周囲をとりまく児童生徒の障害理解・気づき力アップのため、引き続き、「横浜型センター的機能」の活用について、学校への周知を図り、更なる活用を促すことが求められます。  また、発達障害から引き起こされる二次障害により不登校になる児童生徒もいることから、特別支援教室を柔軟に活用し、支援の幅を拡げていく必要があります。  特別支援教育コーディネーターの機能強化とスクールソーシャルワーカーとの連携の充実  学校において、教育と福祉の連携強化のために特別支援教育コーディネーターの果たす役割は大きく、その機能強化を図ることが必要です。また、学校と福祉の橋渡しとなる、スクールソーシャルワーカーと特別支援教育コーディネーターの連携強化による支援の充実が必要です。併せて、それぞれの役割の明確化と連携の仕組みづくりを行い、実践につなげていくことも必要です。  学校と障害福祉サービス等事業所との連携の推進  小中学校では、児童生徒の支援に関する本人や保護者の意向、将来の希望、関係機関等における支援の状況等を記載した「個別の教育支援計画」を作成しています。一方、障害児相談支援事業所では「障害児支援利用計画」を、障害児通所支援事業所では「個別支援計画」を作成しています。必要に応じ、これらの情報を共有し、互いに方向性を確認しながら支援を行うことが必要です。  このため、互いの行う支援への理解を深め、連携を強化する取組が必要です。 W−3 学齢後期における、支援の量的拡大と質的な向上 【喫緊】 (1) 現状と課題  学齢後期障害児支援事業の体制  学齢後期の障害児及びその保護者や家族を対象とした専門機関による相談、診療等の場を確保し、思春期における諸問題の解決に向けた支援を行う「学齢後期障害児支援事業」では、相談・診療の件数ともに増加の一途をたどっています。  発達障害児の増加に伴い、地域療育センターの利用申込みが増加しており、今後、学齢後期における相談・診療のニーズも増加していくと予想されるため、体制の強化が課題となっています。  なお、学齢後期障害児支援事業に関するこれらの課題については、既に平成28年2月に横浜市発達障害検討委員会から横浜市に提言を行っており、その後の相談件数の推移からも、課題解決に向け早期に取り組む必要があります。  高等学校への進学後の支援  高等学校への進学後は、「自分が支援を必要としている」ことを発信できなかったり、自身に発達障害があることに気づいていなかったりして、学校生活に悩む生徒もいます。  また、高等学校を退学する等で学校との関わりが途切れた後に、支援機関とのつながりが乏しくなり、支援や見守りの目が途切れてしまう場合があります。  社会参加に向けた準備  社会参加に向けて、自己理解を深めること、様々な体験を通して新たな生活に向けた準備をすること、日々の生活上の課題に対応できる力を身につけることなどが必要ですが、発達障害児は、これらが十分に身についていない場合があります。また、社会参加に向けた準備を行う中で画一性が求められ、過度に周囲に合わせようとするあまり、本人が疲弊したり、自己肯定感が低下したりする場合があります。  また、家族も、本人が社会参加するにあたって必要な情報が把握できていなかったり、本人への関わり方が分からなかったりする場合があるため、支援が必要なことがあります。    (2) 求められること  学齢後期障害児支援事業の体制強化について  平成28年2月の提言を踏まえ、次の項目に早期に取り組むことが求められます。  事業拡大の方法について、早急に検討を開始すること  検討を行うにあたっては地域療育センター・発達障害者支援センターとの役割分担について議論を行うこと  当該事業での支援のあり方を改めて検討し、医療・福祉の機能について見直しを行うこと  検討の結果、学齢後期障害児支援事業の拡充を図ることとした場合、現在の3箇所の立地に鑑みて、市域におけるバランスを考慮した配置とすること  高等学校への進学後の支援  高等学校への進学後、支援を必要とする生徒や、自身に発達障害があることに気づかないために学校生活に悩む生徒などのために、自己理解につながる支援を実施することが必要です。支援にあたっては、特別支援教育コーディネーターやスクールソーシャルワーカーとの連携や保護者との連携、支援に対する保護者や家族の理解も重要です。  また、高等学校を退学する等で本人と学校との関わりが途切れた後に、支援や見守りが途切れないような体制の構築が必要です。   社会参加に向けた準備のための支援  成人期までの間に、本人が自己理解を深め、「社会に出ること」、「自立すること」が具体的にどのようなことかを学ぶ(19ページ参照)機会の提供や、日々の生活上の課題に対応できる力を身につけるための支援が必要です。  また保護者に対しては、本人が社会参加をするにあたりどのような準備が必要か、本人が社会に出た後にどのような支援を受けられるか等について、情報提供が必要です。 大項目X 人材育成 この項目の視点(ポイント) 地域社会全体で包括的な支援体制を築くために、支援機関全般が、発達障害に関する適切な理解と対応を身につけることが必要です。 X−1 発達障害に関する支援力を身につけた支援者の養成 【喫緊】 (1) 現状と課題  V−1に記載した、地域社会全体による包括的な支援体制の構築にあたっては、支援機関全般が、発達障害に関する適切な理解と対応を身につけることが必要です。  発達障害への専門性の高い相談支援機関(主に二次相談支援機関)が限られる中にあっては、身近な地域の、障害児・者への相談支援機関(主に指定特定相談支援事業所・一次相談支援機関)でも発達障害に関する相談に対応することが求められます。また、障害児・者を主たる支援対象としない機関(保育所・幼稚園、学校、就労先、地域ケアプラザ等)による“0次支援”(23ページ参照)の充実も期待されます。  しかし、身体障害や知的障害に比べ発達障害は新しい概念であることから、発達障害への専門性の高い相談支援機関が中心となり、人材育成を実施することが必要です。  なお人材育成にあたっては、特化した支援方法がまだ十分に確立されていない部分も大きいため、従来からの支援方法に加え、本答申における対象児・者に特化した支援に焦点を当てた取組が必要です。 (2) 求められること  支援機関の特性に応じた支援力の養成  支援機関の特性に応じた、発達障害に関する適切な支援力を養成することが求められます。  ア 障害児・者を主たる支援対象としない機関  発達障害の特性に配慮したコミュニケーション力  発達障害の特性について正しく理解するとともに、それぞれの認知特性に合わせ、発達障害のある人たちが理解しやすく、安心感を覚えることができるようなコミュニケーションを図る力が必要です。  例として、  曖昧さを苦手とする人に簡潔に分かりやすく伝える  複数のことを同時に指示されることが苦手な人に一つずつ伝える  言葉で言われるより目で見て分かる情報の方が理解しやすい人にメモで伝える 等  気づく力とつなぐ力  本人の生きづらさが生じる前、あるいは生じたときに、早期に本人の発達障害に気づき、本人や保護者・家族に寄り添う視点を持って受け止める力が求められます。  また、その気づきをその後の適切な支援につなげるために、抱えこまず誰かに相談し、次につなぐ力が求められます。  イ 障害児・者への相談支援機関  本人の特性に着目した、総合的なアセスメント力  本人を取り巻く様々な要因(本人や家族の特性、生育歴、周辺環境等)を捉え、総合的に見立てるアセスメント力が求められます。  困り感に寄り添う力と、介入する力  本人や家族の困り感や生きづらさに寄り添う力が重要です。  併せて、必要時に、課題解決に向けた適切な介入を行っていく力が求められます。  なお介入にあたっては、総合的なアセスメントに基づき、そのタイミングや方法等を個別に見極める必要があります。     本人や家族の困り感の整理と、適切な支援機関につなぐ力  本人や家族の困り感や生きづらさの内容を整理し、必要に応じて適切な支援機関につないでいく力が求められます。  本人の持てる力を活かすための支援力  本人の障害特性を個別に見立て、持てる力を引き出すことができるような支援を行う力が求められます。  ウ 発達障害への専門性の高い相談支援機関  支援者に対する支援を行う力  それぞれの支援者に求められる支援力を高めるための、研修等を行うことが求められます。  また、地域に出向いて、事業所へのコンサルテーションやスーパーバイズを行うなど、実践的で個別性に対応した取組を拡充していくことが求められます。  対象児・者に即した支援方法の確立  本答申における対象児・者に対しては、その障害特性に応じた、独自の支援方法が求められます。しかし、その支援方法についてはまだ十分に確立していない部分も大きいため、発達障害への支援を専門的に行う機関がその実践的ノウハウを蓄積しつつ、人材育成に資するよう養成カリキュラムとして組織的に構築していくことが求められます。 大項目Y 障害理解の促進・普及 この項目の視点(ポイント) 大項目T〜Xの取組を進める上での基礎として、発達障害への理解を深めること、さらに、多様性を尊重できる社会の実現に向けた意識を、地域社会の中に醸成することが必要です。 Y−1 地域社会における共生の実現に向けた、社会全体の意識醸成 (1) 現状と課題  V−1に記載した地域社会全体による包括的な支援体制の基盤として、地域社会における共生(13ページ参照)に向けた意識を醸成していくことが重要です。  近年、「発達障害」への理解が急速に進みつつあります。一方で、一部では、発達障害の特性等が正しく理解されていない、あるいは、多様性の尊重等への理解が不十分な場合があります。その結果、誤解が生まれかねません。  また、その障害特性が一見して分かりづらい場合には、周囲から適切な理解を得ることが一層困難になります。 (2) 求められること  社会の中では、発達障害の有無にかかわらず、誰もがそれぞれに個性や価値観を有していることを理解し、それらを認め合い、その多様性を尊重することが大切です。  その上で、発達障害の特性について正しい理解を促進することが必要です。  啓発・広報の充実  様々な機会を捉え、社会全体に向けた啓発・広報を充実させる必要があります。  なお、効果的に啓発・広報を行うためには、行政と民間企業等がそれぞれの強みを生かしながら取り組んでいくことが必要です。  ア 民間企業等との協働  横浜市は、近年、民間企業等との協働に力を入れています。とりわけ障害福祉に係る普及啓発等も含めた包括連携協定を締結している大企業が数多くあることは、横浜市の特徴と言えます。  この特徴から、行政による発信と併せて、民間企業等主体の啓発・広報も重要となります。一例としては、自社従業員向けの人材育成や、発信力の強い企業(市内に多く存在するメディアやプロスポーツクラブ等を含む)による地域貢献の一環としての啓発イベント等を、横浜市との協働により実施する手法等が考えられます。  イ 当事者団体・家族団体等の市民との協働  横浜市の障害福祉は、当事者団体・家族団体等と行政の協力によって先進的な施策が進められてきた経緯があります。  こうした経緯を踏まえ、行政だけでは実施困難な幅広い啓発・広報を進めていくために、障害福祉関係者を中心とした市民の主体的活動を横浜市が積極的に支援することが求められます。  「世界自閉症啓発デー」及び「発達障害啓発週間」の取組の充実  横浜市では平成23年度から、世界自閉症啓発デー(注13)及び発達障害啓発週間(注14)に関する取組として、一般社団法人横浜市自閉症協会などと連携しながら、「世界自閉症啓発デーin横浜」と称した市民向け啓発活動(講演会やブルーライトアップ等)を毎年実施しています。  こうした取組を継続的に実施するとともに、その内容を充実させていくことが求められます。  (注13)世界自閉症啓発デー  国際連合が平成19年に毎年4月2日と定めた、世界各国で自閉症をはじめとする発達障害への理解を深めるための日。  (注14)発達障害啓発週間  厚生労働省が、毎年4月2日から8日までと定めている、発達障害への理解を深めるための週間。  「合理的配慮」と「環境の整備(基礎的環境整備)」  地域社会における共生を目指し、その人に合った「合理的配慮(注15)」を個別に提供すること、さらに、その基礎となる「環境の整備(基礎的環境整備)(注16)」を行うことが求められます。 (注15)合理的配慮  障害者の人権を保障し、また社会参加の機会を確保するために、それぞれの障害特性に合わせて提供される、必要かつ適当な配慮のこと。 (注16)環境の整備(基礎的環境整備)  合理的配慮を提供する上での、基礎となる環境を整えること(施設構造の改善、設備の整備、関係職員に対する研修の実施等)。  平成28年4月に施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」の中では、行政機関等及び事業所に対して、障害のある人から、社会的障壁を取り除くために何らかの対応を求める意思が示された際に、負担が重すぎない範囲で合理的配慮を提供すること(事業所においては、提供に努めること)を求めている。併せて、合理的配慮を行うために必要な環境の整備に努めることを求めている。  Y−2 特に教育・就労の場面における、本人を取り巻く周囲への理解促進 (1) 現状と課題  Y−1で記載したように、「発達障害」への理解が急速に進みつつある一方で、障害特性等が正しく理解されていない、あるいは、多様性の尊重等への理解が不十分なまま、「発達障害だから」とラベリングしてしまうことがあります。  その結果、教育や就労の場面において、本人が持てる力を活かすことができなかったり、生きづらさを抱えたりすることが少なくありません。  教育の場  小学校・中学校・高等学校  市立小中学校及び特別支援学校では、「交流及び共同学習(注17)」(市特別支援学校においては「副学籍交流」)による交流教育を実施し、障害理解促進に取り組んでいます。  しかし、学校・家庭・地域間において、そのねらいや方法などの共有や共通理解が十分に図られていないことから、交流及び共同学習の深まりにつながらない現状があります。  高等教育機関(大学等)  「学生相談室」等で、発達障害のある学生の支援を行う大学等が増えています。  しかし、全ての教職員や学生が、発達障害の特性や合理的配慮の提供方法について理解しているとは言えない状況です。  また、就職や卒業後の社会参加に向け必要な支援を受けられない場合があり、本人が十分に準備をできないことがあります。    就労の場  企業等の中で、発達障害の特性や合理的配慮の提供方法が理解されていないことや、発達障害者の受入れ態勢が整っていないこと等により、本人の苦手なことが目立ってしまったり、持てる力を十分に活かすことができなかったりする場合があります。 (注17)交流及び共同学習  幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校及び特別支援学校等が行う、障害のある子どもと障害のない子ども、あるいは地域の障害のある人とが触れ合い、共に活動すること(平成31年3月 文部科学省「交流及び共同学習ガイド」より)。 (2) 求められること  多様性の尊重  多様な人々が多様な価値観を持って一緒に学んだり、働いたりすることができる社会の実現が求められます。  そのためにはまず、誰もがそれぞれに特性を持ち、「得意なこと」、「苦手なこと」があるということが理解され、尊重されることが重要です。  障害理解の促進と、合理的配慮の展開  教育機関・企業等に対し、発達障害の特性に関する正しい理解を促進することが必要です。  さらに、本人及び教育機関・企業等が、本人の「得意なこと」、「苦手なこと」を理解し、個別化された合理的配慮や工夫を提供することで、社会生活上のつまずきを減らしていくことが求められます。  教育の場  小学校・中学校・高等学校  交流及び共同学習においては、交流実施前の準備段階で、一人ひとりの実態に応じた適切な交流及び共同学習に向け、学校・家庭・地域間での共通理解の場を設けることが必要です。  また教員は、児童生徒を「発達障害では」とラベリングするのではなく、「このような特徴がある子ども」という理解で対応を工夫することが必要です。発達障害に気づき、適切な対応ができるようになるために、座学で基礎を学ぶことに加え、学校現場での継続的な学びが求められます。併せて小中学校においては、特別支援学校教諭免許を保有する教員を増やし、障害理解促進につなげることも必要です。  高等教育機関(大学等)  大学や「学生支援室」の教職員等が、発達障害者の支援方法や就労時における発達障害者特有の課題についての理解を深め、適切な支援をすることが求められます。  また学生に対し、多様性の尊重や発達障害の特性等に関する理解を促進することが求められます。  就労の場  本人の「得意なこと」と「苦手なこと」を企業等が理解し、「苦手なこと」への合理的配慮等の提供と併せて、本人の持てる力を十分に発揮できる方法を考えていくことが必要です。  また、本人の障害特性を踏まえ、多様で柔軟性のある働き方(勤務日数・時間、業務内容等)の実現を進めていくことが求められます。  なお、これらの実践にあたっては、必要に応じ、発達障害者支援・就労支援・若者自立支援等の様々な専門機関と連携して取り組んでいくことが有効です。 第4章 今後の展開 4−1 今後の施策展開に向けて 検討を振り返って 2−4(10ページ参照)に記載したとおり、「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者への具体的な施策の展開」について、市長から横浜市障害者施策推進協議会あてに諮問を受けました。これに対し、本協議会の部会である横浜市発達障害検討委員会で検討を進めることとなり、9か月にわたり議論を展開してきました。 近年、大幅に増加している本答申における対象児・者については、従来の障害福祉・教育等施策では十分に対応できていないとの認識の下、施策展開の再構築を図るべく検討を行い、様々な意見が交わされました。また、同検討委員会の委員以外にも、発達障害のある当事者・家族をはじめ、学識経験者や福祉関係者・教育関係者等から意見をいただきました。 具体的取組の推進と確認及び検証 本答申に記載した内容については、横浜市が具体的な施策として展開するとともに、地域社会の様々な主体がそれぞれの取組を進めることが必要です。 なお、取組状況を市民が確認しやすいよう、令和3年度から始まる第4期障害者プラン等へ確実に反映させる必要があると考えます。また、6年間を計画期間とした障害者プランの中で、3年ごとに見直しを行う機会に合わせ、取組状況や取組による効果等について、確認・検証が必要です。 本答申が「絵に描いた餅」にならないよう、同検討委員会においても確認・検証を行っていきます。 これらの取組の推進により、本答申における対象児・者の「生きづらさ」を解消するとともに、誰もが互いの個性を認め合い、多様性を尊重しながら、生き生きと暮らすことのできる社会を実現する役割を、横浜市に期待します。 「気づきの促進と未来に繋がる支援」を Right time & Bright life 資料編 内容 資料1 答申に至るまでの検討経過(42ページ) 資料2 横浜市発達障害検討委員会 委員名簿(44ページ) 資料3 意見聴取対象者名簿(45ページ) 資料4 「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」に関する基礎情報(46ページ) 資料5 教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知)(50ページ) 資料6 横浜市の相談支援機関について(54ページ) 資料1 答申に至るまでの検討経過 1 横浜市障害者施策推進協議会 令和元年度第1回 令和元年6月18日 市長からの諮問に対し、同協議会の部会である発達障害検討委員会にて検討を進めることを決定 令和元年度第2回 令和元年10月25日 検討の進捗状況について確認 答申提出時期、及び検討スケジュールについて確認 令和2年度第1回 令和2年6月29日 答申内容の最終確認・承認 2 横浜市発達障害検討委員会 第48回 令和元年6月26日 市長からの諮問に対し、発達障害検討委員会にて検討を進めることを確認 第49回 令和元年9月18日 関係者への意見聴取にて聴取された意見の共有及び答申(案)の内容に関する検討 第50回 令和元年12月23日 答申(案)の内容に関する検討 第51回 令和2年2月12日 答申(案)の内容に関する最終確認及び検討 この他、委員からの意見聴取を適宜実施した。 3 関係者への意見聴取 発達障害検討委員会での検討内容を深めるため、令和元年6月から11月にかけ、障害児・者やその家族、及び医療・保健・福祉・教育・労働等分野の関係者(計18名)への意見聴取を実施した。 意見聴取対象者一覧は、資料編3(45ページ)参照。 【流れ】 1 横浜市長より諮問(令和元年5月27日) 令和元年度 第1回横浜市障害者施策推進協議会(令和元年6月18日) 諮問に対し、同協議会の専門委員会である発達障害検討委員会にて検討を進めることを決定 第48回横浜市発達障害検討委員会(令和元年6月26日) 諮問に対し、発達障害検討委員会にて検討を進めることを確認 2 答申作成に向けた検討(令和元年6月〜令和2年6月) 関係者への意見聴取 障害児・者やその家族、及び医療・保健・福祉・教育・労働等分野の関係者(計18名)への意見聴取を実施(令和元年6〜11月) 横浜市発達障害検討委員会 第49回(令和元年9月18日) 聴取された意見の共有及び答申(案)の内容に関する検討 第50回(令和元年12月23日) 答申(案)の内容に関する検討 第51回(令和2年2月12日) 答申(案)の内容に関する最終確認及び検討 横浜市障害者施策推進協議会 令和元年度 第2回(令和元年10月25日) 検討の進捗状況について確認 答申提出時期、及び検討スケジュールについて確認 令和2年度 第1回(令和2年6月29日) 答申内容の最終確認・承認 3 横浜市長へ答申を提出(令和2年6月) 資料2 横浜市発達障害検討委員会 委員名簿 1 学識経験者 渡部 匡隆    横浜国立大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻 2 学識経験者 平田 幸宏   東洋英和女学院大学人間科学部 3 医療従事者 高木 一江   横浜市中部地域療育センター 4 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 小川 淳   横浜市総合リハビリテーションセンター 5 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 寺田 純一   かながわ地域活動ホーム ほのぼの 6 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 安藤 壽子   NPO法人 らんふぁんぷらざ 7 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 西尾 紀子   横浜市発達障害者支援センター 8 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 池田 彩子   よこはま若者サポートステーション 9 障害児・者やその家族 坂上 尚子   神奈川LD等発達障害児・者親の会 にじの会 10 障害児・者やその家族 中野 美奈子   一般社団法人横浜市自閉症協会 資料3 意見聴取対象者名簿 1 学識経験者 井上 雅彦   鳥取大学大学院医学系研究科臨床心理学講座 2 学識経験者 日戸 由刈   相模女子大学人間社会学部 3 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 藤嶋 享   神奈川区生活支援センター 4 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 浮貝 明典   NPO法人 PDDサポートセンター グリーンフォーレスト 5 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 鈴木 慶太   株式会社Kaien 6 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 伊藤 美穂   横浜市東部地域療育センター 7 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 遠藤 剛   地域療育センターあおば 8 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 桜井 美佳   横浜市学齢後期発達相談室くらす 9 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 長門 久美子   横浜市井土ケ谷保育園 10 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 福田 誠   たまプラーザもみじ保育園 11 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 檮木 元生   あけぼの幼稚園 12 障害児・者の福祉に関する事業に従事する者 塚原 健   NPO法人 レクタス 13 障害児・者やその家族 鈴木 仁   YPS横浜ピアスタッフ協会 14 教育関係者 大谷 珠美   横浜市立六浦小学校 15 教育関係者 冢田 三枝子   横浜市立仏向小学校 16 教育関係者 大山 美香   横浜市立仏向小学校 17 教育関係者 林 直美   横浜市立西中学校 18 教育関係者 福田 有志   横浜市立左近山中学校 資料4 「軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害児・者」に関する基礎情報 1 厚生労働省「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」   発達障害と診断された者の数(いずれも全国の人数) 平成23年度 手帳所持者 245,700人 非手帳所持者 66,800人 不詳 4,900人 合計 317,400人 平成28年度 手帳所持者 368,000人 非手帳所持者 103,000人 不詳 10,000人 合計 481,000人 2 地域療育センター初診件数と発達障害の診断件数 地域療育センター初診件数と発達障害の診断件数 ここでの「発達障害」は、知的な遅れの有無を問わない。 平成21年度 初診件数 2,645件 うち発達障害の診断件数 1,673件 平成22年度 初診件数 2,569件 うち発達障害の診断件数 1,551件 平成23年度 初診件数 2,864件 うち発達障害の診断件数 1,759件 平成24年度 初診件数 3,144件 うち発達障害の診断件数 2,006件 平成25年度 初診件数 4,046件 うち発達障害の診断件数 2,759件 平成26年度 初診件数 3,811件 うち発達障害の診断件数 2,542件 平成27年度 初診件数 3,944件 うち発達障害の診断件数 2,722件 平成28年度 初診件数 4,256件 うち発達障害の診断件数 2,960件 平成29年度 初診件数 4,432件 うち発達障害の診断件数 3,072件 平成30年度 初診件数 4,560件 うち発達障害の診断件数 3,162件 3 発達障害に関する専門相談支援機関への新規相談者のうち、療育手帳非所持者(平成30年度) (1) 学齢後期発達相談室「くらす」 新規相談者数 合計114人 うち、療育手帳所持者 17人(15%) 療育手帳非所持者 97人(85%) (2) 発達障害者支援センター 新規相談者数 合計253人 うち、療育手帳所持者 18人(7%) 療育手帳非所持者 235人(93%) 4 一般学級に在籍する特別な支援が必要とされる児童生徒数の推移    平成30年度「発達障害のある児童生徒に関する調査」より 手帳および診断の有無を問わない調査のため、あくまで参考値。 小学校 全体数 175,556人 うち、支援が必要な人数 19,226人(10.95%) その他 156,330人(89.05%) 中学校 全体数 75,554人 うち、支援が必要な人数 5,441人(7.20%) その他 70,113人(92.80%) 5 通級指導教室在籍児童生徒数                                      通級指導教室児童生徒数 小学校 平成22年度 弱視 7人 難聴 100人 言語 417人 情緒 581人 LD・ADHD 149人 計 1,254人 平成23年度 弱視 0人 難聴 104人 言語 405人 情緒 576人 LD・ADHD 173人 計 1,258人 平成24年度 弱視 0人 難聴 114人 言語 417人 情緒 603人 LD・ADHD 193人 計 1,327人 平成25年度 弱視 0人 難聴 111人 言語 402人 情緒 576人 LD・ADHD 222人 計 1,311人 平成26年度 弱視 0人 難聴 114人 言語 446人 情緒 565人 LD・ADHD 269人 計 1,394人 平成27年度 弱視 0人 難聴 111人 言語 509人 情緒 694人 LD・ADHD 340人 計 1,654人 平成28年度 弱視 0人 難聴 113人 言語 535人 情緒 726人 LD・ADHD 384人 計 1,758人 平成29年度 弱視 0人 難聴 116人 言語 540人 情緒 793人 LD・ADHD 444人 計 1,893人 平成30年度 弱視 0人 難聴 126人 言語 576人 情緒 795人 LD・ADHD 493人 計 1,990人 令和元年度 弱視 0人 難聴 138人 言語 635人 情緒 771人 LD・ADHD 508人 計 2,052人 中学校 平成22年度 弱視 1人 難聴 19人 言語 44人 情緒 195人 LD・ADHD 45人 計 304人 平成23年度 弱視 0人 難聴 20人 言語 40人 情緒 197人 LD・ADHD 56人 計 313人 平成24年度 弱視 0人 難聴 17人 言語 35人 情緒 214人 LD・ADHD 54人 計 320人 平成25年度 弱視 0人 難聴 23人 言語 45人 情緒 187人 LD・ADHD 43人 計 298人 平成26年度 弱視 0人 難聴 26人 言語 45人 情緒 195人 LD・ADHD 72人 計 338人 平成27年度 弱視 0人 難聴 26人 言語 44人 情緒 217人 LD・ADHD 107人 計 394人 平成28年度 弱視 0人 難聴 25人 言語 44人 情緒 238人 LD・ADHD 143人 計 450人 平成29年度 弱視 0人 難聴 24人 言語 53人 情緒 223人 LD・ADHD 166人 計 470人 平成30年度 弱視 0人 難聴 22人 言語 55人 情緒 262人 LD・ADHD 147人 計 486人 令和元年度 弱視 0人 難聴 16人 言語 57人 情緒 312人 LD・ADHD 145人 計 530人 盲特別支援学校 平成22年度 小学部(弱視)0人 中学部(弱視)0人 計 0人 平成23年度 小学部(弱視)7人 中学部(弱視)3人 計 10人 平成24年度 小学部(弱視)10人 中学部(弱視)1人 計 11人 平成25年度 小学部(弱視)11人 中学部(弱視)2人 計 13人 平成26年度 小学部(弱視)11人 中学部(弱視)1人 計 12人 平成27年度 小学部(弱視)9人 中学部(弱視)1人 計 10人 平成28年度 小学部(弱視)8人 中学部(弱視)2人 計 10人 平成29年度 小学部(弱視)7人 中学部(弱視)4人 計 11人 平成30年度 小学部(弱視)4人 中学部(弱視)5人 計 9人 令和元年度 小学部(弱視)8人 中学部(弱視)4人 計 12人 ろう特別支援学校 平成22年度 小学部(難聴)22人 小学部(言語)4人 中学部(難聴)4人 中学部(言語)0人 計 30人 平成23年度 小学部(難聴)23人 小学部(言語)6人 中学部(難聴)7人 中学部(言語)0人 計 36人 平成24年度 小学部(難聴)19人 小学部(言語)3人 中学部(難聴)9人 中学部(言語)0人 計 31人 平成25年度 小学部(難聴)17人 小学部(言語)4人 中学部(難聴)10人 中学部(言語)0人 計 31人 平成26年度 小学部(難聴)19人 小学部(言語)4人 中学部(難聴)11人 中学部(言語)0人 計 34人 平成27年度 小学部(難聴)17人 小学部(言語)4人 中学部(難聴)13人 中学部(言語)1人 計 35人 平成28年度 小学部(難聴)13人 小学部(言語)7人 中学部(難聴)19人 中学部(言語)1人 計 40人 平成29年度 小学部(難聴)18人 小学部(言語)8人 中学部(難聴)19人 中学部(言語)1人 計 46人 平成30年度 小学部(難聴)18人 小学部(言語)8人 中学部(難聴)17人 中学部(言語)1人 計 45人 令和元年度 小学部(難聴)18人 小学部(言語)8人 中学部(難聴)17人 中学部(言語)1人 計 44人 6 障害種別就学・教育相談件数 障害種別就学・教育相談件数 平成26年度 肢体不自由等 431件 知的障害 1,077件 発達障害 2,502件 平成27年度 肢体不自由等 408件 知的障害 1,033件 発達障害 2,523件 平成28年度 肢体不自由等 414件 知的障害 1,096件 発達障害 2,757件 平成29年度 肢体不自由等 451件 知的障害 1,144件 発達障害 2,726件 平成30年度 肢体不自由等 523件 知的障害 1,165件 発達障害 2,780件 7 児童福祉法に基づくサービス 延べ利用人数 平成25年度 児童発達支援 124,673人 医療型児童発達支援 19,123人 放課後等デイサービス 86,458人 保育所等訪問支援 146人 平成26年度 児童発達支援 140,759人 医療型児童発達支援 22,127人 放課後等デイサービス 201,550人 保育所等訪問支援 96人 平成27年度 児童発達支援 159,562人 医療型児童発達支援 20,953人 放課後等デイサービス 350,782人 保育所等訪問支援 66人 平成28年度 児童発達支援 176,280人 医療型児童発達支援 18,849人 放課後等デイサービス 521,130人 保育所等訪問支援 89人 平成29年度 児童発達支援 199,766人 医療型児童発達支援 18,604人 放課後等デイサービス 652,983人 保育所等訪問支援 128人 平成30年度 児童発達支援 228,309人 医療型児童発達支援 16,974人 放課後等デイサービス 772,894人 保育所等訪問支援 1,185人 事業所数 平成25年度 児童発達支援 43箇所 医療型児童発達支援 9箇所 放課後等デイサービス 58箇所 保育所等訪問支援 9箇所 平成26年度 児童発達支援 46箇所 医療型児童発達支援 9箇所 放課後等デイサービス 93箇所 保育所等訪問支援 9箇所 平成27年度 児童発達支援 53箇所 医療型児童発達支援 9箇所 放課後等デイサービス 162箇所 保育所等訪問支援 9箇所 平成28年度 児童発達支援 77箇所 医療型児童発達支援 9箇所 放課後等デイサービス 217箇所 保育所等訪問支援 10箇所 平成29年度 児童発達支援 101箇所 医療型児童発達支援 9箇所 放課後等デイサービス 262箇所 保育所等訪問支援 13箇所 平成30年度 児童発達支援 116箇所 医療型児童発達支援 9箇所 放課後等デイサービス 292箇所 保育所等訪問支援 26箇所 横浜市における予算・決算額(障害児通所支援) 平成25年度 予算額 1,589,903円 決算額 2,049,654円 平成26年度 予算額 3,175,543円 決算額 3,273,155円 平成27年度 予算額 3,482,835円 決算額 4,909,228円 平成28年度 予算額 5,763,015円 決算額 7,116,963円 平成29年度 予算額 7,693,938円 決算額 9,008,275円 平成30年度 予算額 9,386,230円 決算額 10,617,519円 資料5 教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知) 30文科初第357号 障発0524第2号 平成30年5月24日 各都道府県知事 各指定都市市長 各都道府県教育委員会教育長 各指定都市教育委員会教育長 附属学校を置く各国公立大学法人学長 構造改革特別区域法第12条第1項の認定を受けた各地方公共団体の長 殿 文部科学省初等中等教育局長 (公印省略) 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長 (公印省略) 教育と福祉の一層の連携等の推進について(通知) 教育と福祉の連携については、保育所、幼稚園、認定こども園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校等(以下「学校」という。)と児童発達支援事業所、放課後等デイサービス事業所等(以下「障害児通所支援事業所等」という。)との相互理解の促進や、保護者も含めた情報共有の必要性が指摘されているところであり、各地方自治体において、教育委員会や福祉部局の主導のもと、支援が必要な子供やその保護者が、乳幼児期から学齢期、社会参加に至るまで、地域で切れ目ない支援が受けられる支援体制の整備が求められている。 特に、発達障害者支援については、発達障害者支援法の一部を改正する法律(平成28年法律第64号)が平成28年8月1日から施行されており、「個々の発達障害者の性別、年齢、障害の状態及び生活の実態に応じて、かつ、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関及び民間団体相互の緊密な連携の下に、その意思決定の支援に配慮しつつ、切れ目なく行われなければならない」とされている。こうした課題を踏まえ、文部科学省と厚生労働省では、昨年の12月より、両省による家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトにて検討を行い、このたび、本年3月に別添1のとおり「家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告」(以下「報告」という。)を取りまとめたところである。 両省においては、報告を踏まえ、今後さらに施策の充実を図ることとしており、貴職におかれても報告の趣旨を踏まえ、下記について積極的な取組をお願いしたい。 なお、各都道府県におかれては、貴管内市町村(指定都市を除き、特別区を含む。)及び関係機関等に対して、各都道府県教育委員会におかれては、所管の学校及び域内の市町村教育委員会に対して、各指定都市教育委員会におかれては、所管の学校に対して、各都道府県知事及び構造改革特別区域法(平成14年法律第189号)第12条第1項の認定を受けた地方公共団体の長におかれては、所轄の学校及び学校法人等に対して、各国立大学法人学長におかれては、附属学校に対して、このことを十分周知し、本通知の運用に遺漏のないようご配慮願いたい。 記 1 教育と福祉の連携を推進するための方策について 発達障害をはじめ障害のある子供は、教育委員会、福祉部局といった各地方自治体の関係 部局や、学校、障害児通所支援事業所等といった複数の機関と関わっていることが多い。 各地方自治体においては、教育委員会と福祉部局において各制度を所管しているが、双方の垣根を排除し、就学前から学齢期、社会参加まで切れ目なく支援していく体制を整備することが重要であることを踏まえ、以下の取組を促進すること。 (1)教育委員会と福祉部局、学校と障害児通所支援事業所等との関係構築の「場」の設置について 学校と障害児通所支援事業所等の管轄部署が異なるため、障害のある子供の情報が双方の現場で共有されにくいことを踏まえ、各地方自治体は、教育委員会と福祉部局が共に主導し、学校と障害児通所支援事業所等との関係を構築するための「連絡会議」などの機会を定期的に設けること。その際、各地方自治体は、別添2の地方自治体の実践事例等を参考に、既存の特別支援教育連絡協議会、発達障害者支援地域協議会及び(自立支援)協議会等の既存の協議会を活用する等、効率的かつ効果的な運営に努めること。 (2)学校の教職員等への障害のある子供に係る福祉制度の周知について 例えば、小・中学校から放課後等デイサービス事業所への送迎時において、放課後等デイサービスについての教職員の理解が深まっていないために、対象児童生徒の学校における様子などの情報提供をはじめとする学校の協力が得られにくいことがある。これを踏まえ、各地方自治体において、教育委員会と福祉部局が連携し、放課後等デイサービスや保育所等訪問支援事業を含む障害のある子供に係る福祉制度について、小・中学校や特別支援学校の校長会、教職員の研修会等において福祉部局や障害児通所支援事業所等が説明する機会を確保し、学校の教職員等に対して制度の周知を図ること。 また、特に、保育所、幼稚園、認定こども園等の子供とその保護者が集まる場には、発達障害に関する知識を有する専門家を派遣する、巡回支援専門員整備事業を活用するなどし、発達障害についての知識や対応技術の普及を促すこと。 (3)学校と障害児通所支援事業所等との連携の強化について 学校と放課後等デイサービス事業所において、お互いの活動内容や課題、担当者の連絡先などが共有されていない等により、両者の円滑なコミュニケーションが図れず連携ができていない。他方、個々の障害児に対する支援計画については、各学校において個別の教育支援計画を、障害児通所支援事業所等において個別支援計画を作成している。こうした状況を踏まえ、学校と障害児通所支援事業所等間の連携方策について、別添2の地方自治体の実践事例を参考に検討し、学校と障害児通所支援事業所等間の連携の仕組みを構築すること。 2 保護者支援を推進するための方策 障害のある子供やその保護者にとって、専門的な相談ができる機関や保護者同士の交流の場が必要であることを踏まえ、各地方自治体においては、以下に示す支援等に取り組むこと。 (1)保護者支援のための相談窓口の整理について 乳幼児期、学齢期から社会参加に至るまでの各段階で、必要となる相談窓口が分散しており、保護者は、どこに、どのような相談機関があるのかが分かりにくく、必要な支援を 十分に受けられないことがある。これを踏まえ、各地方自治体においては、教育委員会と福祉部局が連携し、別添3に示した相談窓口を一元化している地方自治体の事例等を参考に、教育委員会や福祉部局等の関係部局及び教育センター、保健所、発達障害者支援センター、児童発達支援センター等の関係機関の相談窓口を整理し、保護者が自治体のどこの部署や機関に相談すればよいのかを分かりやすく示すこと。 なお、相談の対応に際しては、以下の2(2)で作成したハンドブックを活用するなど、担当以外の職員であっても適切な窓口を紹介できるようにすること。 (2)保護者支援のための情報提供の推進について 保護者は、相談支援事業所や障害児通所支援事業所等のサービス内容や利用方法が分からず、子供に合う事業所を見つけることに苦労したり、相談窓口がわからず、誰に相談してよいのかわからないということがある。これを踏まえ、各地方自治体においては、福祉 制度が分かりやすく、利用しやすいものとなるよう、支援に係る情報や相談窓口が一目で分かるような、保護者向けハンドブックを作成すること。 さらに、各地方自治体がハンドブックを作成する際には、別添4を参考に、障害についての基本的な事項、子供やその保護者が受けられる教育・福祉制度の概要、その自治体において提供される行政サービスの内容や相談機関の概要と連絡先等など、保護者が必要とする内容を盛り込み、継続的にその活用と周知を図ること。 (3)保護者同士の交流の場等の促進について 周囲に子育てに関する悩み等を話せる人がおらず、障害のある子供の保護者が孤立感・孤独感を感じてしまい、家にひきこもってしまう場合があることを踏まえ、各地方自治体においては、こうした保護者同士の交流の場を設けるピアサポートの推進や専門的な研修を受けた障害のある子供を持つ保護者(以下「ペアレントメンター」という。)の養成及びペアレントメンターによる相談支援を実施すること。 また、家庭での教育も重要であることから、保護者が発達障害の特性を踏まえた接し方や褒め方等を学び、子供の問題行動を減少できるよう、保護者に対してペアレントプログラムやペアレントトレーニングによる支援を行うこと。 さらに、教育委員会においても、福祉部局と連携しつつ、就学相談、教育相談等の機会を捉え、保護者同士の交流を促進するような取組を促すこと。 (4)専門家による保護者への相談支援について 障害児支援利用計画の作成にあたる相談支援専門員について、障害のある子供や発達障害について専門的知識を有する者が不足していることを踏まえ、各都道府県は、相談支援専門員が受講する、障害のある子供についての知識や経験等を積むことができるような専門コース別研修を積極的に開催すること。 本件連絡先 文部科学省初等中等教育局 特別支援教育課支援総括係 齊藤 TEL:03−5253−4111(内線 3254) 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課 障害児・発達障害者支援室 発達障害者支援係 当新 TEL:03−5253−1111(内線 3038) 別添1.家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト報告(平成30年3月29 日 家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクトチーム) 別添2.教育と福祉の関係部局・機関の関係構築の場として、既存の会議を活用した事例及び学校と障害児通所支援事業所等との連携の実践事例 1 徳島県 2 大阪府箕面市 別添3.相談窓口一元化の実践事例 1 東京都日野市 2 新潟県三条市 別添4.保護者支援のためのハンドブック作成にあたってのポイント (参考1)栃木県宇都宮市の例: 「発達障がいを正しく理解しよう!(乳幼児期編)」リーフレット、パンフレット http://www.city.utsunomiya.tochigi.jp/kurashi/shogai/hattatsu/1004265.html (参考2)富山県の例: 「ひとりじゃないよ(学齢期)発達障害支援ハンドブック」ハンドブック http://tym-ariso.org/not_alone.html 資料6 横浜市の相談支援機関について 相談体制における分類は次のとおりです。 分類:身近な相談者 役割:日頃の関わりの中で、何気ない会話に含まれている相談に気付き、必要に応じて適した相談支援機関に繋げます。 機関:学校、施設、医療機関、近隣住民、サービス提供事業者、グループホーム、作業所、地域ケアプラザ、障害者支援センター区社会福祉協議会、中途障害者地域活動センター、ピア相談センターなど 分類:指定特定相談支援事業所 役割:計画相談支援を利用する方の支援の中心を担います。 機関:各指定特定相談支援事業所 分類:一次相談支援機関 役割:地域の相談支援専門機関として、どんな相談でも受け止め、支援を考えます。また、計画相談支援を利用しない方の支援の中心を担います。 機関:障害者地域活動ホーム相談支援担当、生活支援センター、療育センター、区福祉保健センター、児童相談所、就労支援センターなど 分類:二次相談支援機関 役割:専門的・個別的な相談及び助言を行います。他の機関と異なり、専門知識を活かして一次相談支援機関等が行う支援をサポートします。 機関:障害者更生相談所、こころの健康相談センター、総合保健医療センター、総合リハビリテーションセンター、十愛病院、横浜療育医療センター、てらん広場、花みずき、青葉メゾン、発達障害者支援センター 相談支援機関の関係 身近な相談者と一次相談支援機関は、情報共有を図ります。 一次相談支援機関は、指定特定相談支援事業所の後方支援を行います。 二次相談支援機関は、一次相談支援機関の後方支援機関を行います。 それぞれの相談支援機関により、連携の輪を作ります。